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もうお前を離さない295

「………そっか…。長曾我部さんは徳川家康の友人…」
「長曾我部が西軍につけば、東軍からは戦力を減らせる。敵にさせるに最も簡単なのは、相手に憎しみを抱かせる事だ。それによって徳川へ精神的打撃も与えられるしね。まさに一石二鳥!その上でその事を周囲にばらまけば、徳川方の信用も落ちる」
「………………」
「まぁこれだけじゃ確実じゃない。そこで最後の一手。さて、長曾我部。四国強襲の後、毛利から中国も徳川の奇襲を受けたっていう文を受け取っただろう?」
「あ、あぁ…」
「そこで毛利に遠回りに西軍につく事を勧められたはずだ」
「…!」
「三成さん本人は知らないから、三成さんと会っても違和感が生じる事もない」
「…つまりは大谷さんと毛利さんの合作の罠?」
「そういう事。毛利は自国さえ守れればそれでいいから、その為に邪魔な徳川を排除するのに乗ったってワケだ」
「…。…どうして……じゃあ真田と同盟をした後の中国攻めは?」
「表向きの盟約を結ぶ。確かそう言ってた。あくまで長曾我部を嵌めたのは2人の暗躍の成果だからね。まだ西軍と毛利は繋がっていない」
「…どうしてまたそんな手の込んだ事をしてまで…」
「悪巧みは大谷さんが好きな事だ、そこまで面倒ではないはず」
大谷は黙ったまま聞いている。否定をしなければ肯定もしない。
宮野はそんな大谷を見たのち、ふいと視線を戻した。
「…悪巧みが好き…」
「ケッ、虫の好かねぇ野郎だぜ」
「勘違いするなよ長曾我部」
宮野の言葉に悪態を吐いた長曾我部に対する宮野の答えには怒りがこもっていた。そこで怒りを覚えられるとは思わなかった長曾我部は驚いて宮野を見る。
「人間は最初からそんな風には生まれてこない。人から憎まれやすい性格になるのは全て、周りの人間の影響だ。大谷さんが卑劣だと言いたいんでしょう?大谷さんをそうしたのは私たち人間である事を自覚してからそういう事は言えよ」
「は…?」
「…何を言う。主はまこと滑稽よなあ」
「完全な私の持論ですが、私はそう思ってますよ。愛される事に慣れた人間は愛に疎くなり、憎しまれる事に慣れた人間は憎しみに疎くなる。…、凡そ世の中で悪党と言われる人は運が悪かった…。それだけで片付けてしまっていい問題だなんて思わない、それでも私はそう言うしかない…。そして人は己より弱いものを欲しがる。自分が優位に立ちたいと本能的に思ってる。だからこそ、大谷さんのような人は蔑まれやすい。そしてそうした人は卑屈になってくもんだ」
「…普通じゃないから…」
ぎり、と宮野の歯が鳴った。握られた拳はぷるぷると震えている。
「…だから私は人間が嫌いなんだ。自分が同じ人間である事にも反吐が出る…ッ!」
「………黎凪は普通じゃない立場の人間でしょ?私は、それが羨ましいよ黎凪」
「なんで。ろくな事ないくらい、見てて分かるだろ。私も普通と比べれば相当卑屈だし」

「でもだからこそ、黎凪にはその立場の人の気持ちが分かる」

私には大谷さんの気持ちは分からない。だから羨ましい。
村越の言葉に大谷は驚いたように村越を見た。宮野はそんな村越に、優しい笑みを浮かべる。
「…そこまでして、大谷さんの気持ちが知りたいのか?」
「…私は三成さんが大切だよ。だから同じくらい大谷さんも大切なの!」
「…!」
「…一途な所は相変わらずか。大谷さん、私が思った事話しますが構いませんか」
「………好きにしやれ」
「はい、好きにします」
宮野はそう言うと一回深呼吸をし、そして話し始めた。
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