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もうお前を離さない275

「独眼竜!ちょっと待ってくださいよ!追い付けません!」
「Ha!仕方ねぇなァ」
「ったく…ゲームでさえ追い付くの至難の技なのに」
伊達と宮野が出発してから早二刻。辺りは暗くなり始めている。
止まった伊達の隣に追い付いた宮野はぶつぶつとそう言った。
「??」
「何でもないですー。…しかし、貴方1人で大丈夫なんですか?」
宮野の問いに伊達は口角を釣り上げて笑う。
「なんだ?俺1人じゃ何か不安か?」
「えぇ主に貴方の帰り道が。そもそも今上田城には大谷さんと芽夷がいるんでしょう?攻撃されてもしりませんよ」
「負ける気はしねぇ。伊達に独眼竜は名乗ってねぇよ」
「ふむ。ならいいですが。…、まさかこんな風に返されるとは思ってませんでした」
「…元々アンタを連れて帰ったのはアンタと話がしたかったからだけだからな。捕虜として使うつもりはなかった。それに、アンタがここにいる間アンタに二度も危害を加えちまったからな」
「…一回はともかく、一回は山賊ですよ」
「とにかくな。アンタを連れて帰ってなかったらこうはならなかった。だろう?」
「…甘くないですか、そんな考え」
伊達は宮野の言葉にくすりと笑った。宮野は不思議そうに伊達を見る。
「アンタは随分厳しいな?自分にも他人にも。素直に喜んだらどうなんだ?」
「喜ぶ……って言われましても…」
「それともアンタは真田に助けに来てもらいたかったか?」
「まさか。そんな危ない事してほしくありません」
「…つくづく夢がねぇなァ」
「すいませんでしたね」
ふん、とそっぽを向いた宮野に伊達はまたくすりと笑った。組んでいた腕を解き、懐に手を入れた。
そして懐から取り出したそれを宮野に差し出した。
「…!!」
「小十郎の土産だ」
「ど…どこで?!」
差し出したのは、宮野が無くしたはずの兜割りだった。宮野は驚愕した表情のままそれを受け取る。
伊達はしてやったり、とでも言うかのような笑みを浮かべた。
「近くの村の子供が持ってたそうだ。無くしたって話を出発の時に話しておいたら覚えてたらしくてな。これだろ?」
「!…あ…ありがとうございます…」
震える声で礼を言い、兜割りを抱きしめた宮野に、伊達は彼らしからぬ優しげな笑みを浮かべ、宮野の頭を撫で顔に触れた。
「!」
「漸くcuteな顔したな」
「か…可愛い?!」
「可愛いと言われるのは嫌か?」
「…あんまり嬉しくないです……」
伊達は宮野の言葉に笑い、頬の手を顎へと移した。くい、と顎を持ち上げる。
「勿体ねぇな。アンタ、結構いい女だぜ」
「いいって…何が!っていうより危ない危ない!」
宮野は慌てて前を見る。2人は乗馬中という事を忘れてはいけない。
伊達は慌てる宮野にまた笑い、そっと手を離した。
「……なんで真田は西軍についちまったんだろうな」
「…え?」
「………この戦いはどう足掻いても憎悪がまみれたdeathmatchにしかならねぇからな」
そう言った伊達に宮野は視線を前から伊達に戻す。
「…、…。私にしてみりゃ戦なんて全てデスマッチです」
「Ha…そうかい」
「…それに。大丈夫ですよ。私が止めますから」
「!」
「関ヶ原の戦い自体はきっともう、止められない。でも…誰も死なせない。貴方のデスマッチ、ただのバトルに変えてみせますよ」
「…!ハハハッ!!You are so interesting!!…期待してるぜ?宮野」
「えぇ」
宮野と伊達はそう言い合い、同時に挑戦的な笑みを浮かべたのだった。
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