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もうお前を離さない283

真田は苦々しい表情の宮野を見た後、視線を2人が消えた方向に飛ばした。
「…よいのか?」
「…よいのかと言われても…。……私が暴露するわけにはいかない。大谷さんがついた嘘は、東軍西軍どちらにも関わる大きな問題になるから」
「な…!それ程までに?!」
「人殺してるからねー……」
「………もしや、」
「?」
「…前々から不思議に思っておったのだ。四国壊滅の件を…」
「……………」
苦い表情で言われた真田の言葉に、宮野は何も言わなかった。それはつまり、肯定したという事だ。
真田もそう取ったらしい、さらに表情を暗くさせた。視線を宮野に戻す。
「…、否定せぬという事はそうなのだな?」
「……まだ、三成さん達には内緒だよ。西軍に属する以上こちらから暴露するのはよろしくないし、何より。…これは当人達が自ら知ろうとしなきゃいけない事だと思うから」
「黎凪…………」
「ヒントは出した。後は当人しだい」
「…、本当にそれでよいのか?」
「……………」
「お前は、皆を後悔させたくないのだろう?」
真田は優しく、どこまでも優しくそう尋ねた。真田は宮野が迷っている事に気が付いていた。だから敢えて、迷っている事を突き付けた。
宮野は真田を見た後、ぽつりぽつりと話しだした。
「…、それでも…私は神様じゃない。自分が生きる道は自分で決めるべきだと思うから…私は…」
「…、うむ」
「…確かに、当人達が気が付かなければ操作したって問題はないと思う……今の長曾我部さんのようにね。でも、私はそんな仮初めの平和を作りに来たんじゃ、ない…から」
「仮初め…か」
「嘘も貫き通せば真になるとはいうけど、私は…それは違う気がするんだ。…だって嘘だもの。事実を無かった事にして嘘が事実だと思い込ませてる。私は、それだけは…やりたくない」
「…なら、よいではないか。ひんととやらは与えたのだろう?」
そう言って真田は宮野の体を抱き寄せ、驚いて自分を見た宮野に笑いかけた。
真田の頭の中では破廉恥という言葉が鳴り響いていたが、真田はただ宮野を抱き締めた。
「うん…。徳川家康に、四国壊滅はアンタの仕業らしいねって」
「ほぼ答えではないか」
「…それで徳川が動くかどうか。徳川は目の前に長曾我部が現れて身に覚えのない事を言われても受け入れちゃう人だから」
「………そうか。長曾我部殿には何か伝えるのか?」
「長曾我部は友人の徳川を信じきらなかった。私からは何もしない」
「何故だ?」
「あの人は単純過ぎる。だから私が言えば簡単にそれを信じると思う。それじゃ意味がない」
「……、そうだな」
真田はそう言うとくしゃりと宮野の頭を撫でた。宮野は真田の体に腕を回し、胸に顔を押しつけて目を閉じた。
耳元に聞こえた真田の心搏音に、宮野はくすりと笑った。
「幸村、今、破廉恥、って思ってるでしょ」
「なっなっ、何故分かったっっ!!」
「心臓の音が速くなってる。緊張すると速くなるんだよ、心臓の動き」
「…心臓とはなんだ?心の臓の事か?」
「うん。刺せば一発で殺せる」
「ぶ、物騒な事を申すなっ」
「はっはー。私はそれより首の脛骨折るけどね」
「…ぶふっ。いつもの調子に戻ったな、黎凪。安心したぞ」
「!……、ありがとう幸村。私頑張るよ」
「うむ。俺も共に尽力いたすぞ!!」
2人は体を離し互いの目を見つめあうと同時に笑った。
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