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もうお前を離さない276

夜。日が沈み、伊達と宮野は馬足を速めていた。
しばらく黙って馬を走らせていた2人だったが、不意に宮野が後ろを振り返った。
「…独眼竜。追われてますね」
「That's right…昨日の山賊野郎か。…、やりあうか」
「いいですね。数、分かります?」
嬉々として答えた宮野に伊達は目を閉じ耳を澄ませた。
「……馬の足音からして、馬は四頭。それに合わせて三人分」
「…ってことは7人?」
「いや、……6人だな」
「1頭は乗ってないと?」
「ああ。考えられるとすれば、連れ去り用…って所か」
伊達はそう言い、にやりと笑った。
「こりねぇthievesだな。前回より少人数で勝てると思ってんのか?」
「独眼竜、シーフは泥棒です。山賊じゃありません」
「Really??そりゃいい事聞いたぜ」
2人は言い合いながら静かに馬を止めた。馬を木につなぎそれぞれ手に得物を構えた。



 同じ頃、上田城では。
「…幸村さん、もっと怒らなくてよかったんですか?」
「…は、はっ?」
北条軍が完全に撤退し、猿飛は貰った薬を手に武田信玄の元へと夜闇に消えた。
一息ついた真田は村越にそう言われ、驚いて振り返った。浮かない表情を浮かべる村越に、真田は苦笑する。
「そう言われましても…損害はあちらの方が多いのでござるよ。謝らねばならぬは寧ろこちらの方…」
「ッ、幸村さん方だって被害は出ています!三成さんの三隊は、死者こそいなかったものの…!」
「戦とは、斯様なモノにござる」
「!!」
「理不尽であり、不条理であり…何より、不平等なモノにござる。…某は北条殿に受けて立った。戦を受けたのでござる。某も兵を殺されたように、北条殿も某に兵を殺されたのでござる。戦に平等は罪のみ。…某は怒ることのできる立場ではござらん」
「…、すいません」
「?!あ、謝らんでくだされ!…、しかし思えば…こう考え始めたは、黎凪との出会いにござったな」
しゅんとした村越に、真田は謝ったあとぽつりとそう言った。僅かに驚いて自分を見た村越に真田は再び苦笑する。
「黎凪や伊達殿、片倉殿、明智殿……様々な御仁に影響を受けたゆえ。……これほど戦が無用な物に思えたは初めてにござる」
「…幸村さん……」
「…少し外に出ませぬか、村越殿」
「えっ?」
「…人目のない所で話したいのでござる」
「…分かりました」
村越は真田の目を見て、それが自分達の事だと察すると歩き始めた真田の後についていった。
それを見つけた大谷は、しばらく考え込む様子を見せた後2人を追った。
 「…村越殿。某、気になる事がありもうす」
「…なんでしょう」
「貴殿はまだ、黎凪に何か遠慮しておる気がするのでござる」
「…遠慮……?って、まだってまさか…!」
「黎凪は何も言っておりませぬ」
「!」
「ただ、自分にも貴殿にも少し腹がたったと」
「!!」
じっと自分を見る真田に、村越は僅かに俯いた。真田は目を逸らさずに村越を見続け、そして言葉も続けた。
「秘密事だと聞いた故、何があったかは聞きませぬ。ただ、斯様な顔で黎凪に会わないでいただきたい」
「え…?」
「…某はこれ以上、黎凪を苦しめたくないのでござる…!」
「…!」
真田はぎっ、と村越を睨み付けるように見た。
否、睨み付けたのだろう。その視線には僅かに怒りが見える。
「黎凪は貴殿との間に起こった事に、驚愕したのみで何も思っておらぬ!貴殿がそれを気にし、今のように遠慮するような態度を取られては、あやつは必ず悲しむ!貴殿が遠慮するのはいい、されど、それだけはしないでいただきたい!!」
「………ッ」
真田はそう、怒鳴った。
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