スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない281

「…話し掛けられない…」
「ヒヒヒッ、そうよなァ」
そんな2人の様子を、城門の影から村越と大谷が覗いていた。村越は目を覚ました時、宮野が1人、じっと城門を見つめていたのが気に掛かり、動いた宮野を追ってきた。大谷はその村越についてきていた。
しばらく待ってみたが2人は何やら話し込んでしまったらしく、村越は宮野に話し掛けるのを諦め、とぼとぼと城門から離れた。
「…あれと真田が仲良しこよしをするが不服か?」
「なっ!!そんな事はありません!黎凪の初恋の彼氏ですもん!…、ただ…昨日は幸村さんに言われた事もあって話せなかったから、ちゃんと話したかっただけです。…どこか…様子も変わってるし」
「ほぅ?」
「徳川家康と話した、って言ってましたけど…何かあったのかな…」
「…ヒヒ、奴にあれの考えを変えられるような事を言えるとも思えぬがなぁ…」
「そ、そうですか?」
村越は僅かに驚いて大谷を振り返った。大谷はちら、と城門を振り返った後、ヒヒ、とまた笑った。
「我が思うに、あれが説得されたのではなく、あれが説得出来なかったのではないか?」
「説得…出来なかった……」
「その前の独眼竜の言葉は聞こえなんだか?」
「…あ、期待はしている。だが、俺は俺の目的をめざす。だから手伝いはしねぇ…って、奴ですか?」
「要は実現するのが無理に等しいと思うておるということよ」
「!…そんな」
「まァ、我はとんと知らぬ事ゆえなんとも言えぬがなぁ…」
そう言って再び肩を揺らして笑った大谷に、村越は僅かに俯き足を止めた。
「…黎凪は……三成さんを止めようとしているんです」
「…何?」
村越の言葉に大谷の笑いが止み、物騒な光を目に宿した。村越はその光には気が付かないまま大谷を見上げた。
「黎凪は三成さんが徳川を殺してしまったら後悔する事を知ってる、だから止めようとしているんです」
「後悔する?何故よ」
「えっと……三成さんが徳川を殺してしまったら、生きる理由を失うから。それはつまり、三成さんは秀吉様の為ではなく、自分が生きる為に徳川を追っていたということ、それに気が付いてしまうから」
「!!!!」
村越の言葉に大谷は驚いたように目を見開いた。村越は大谷から目を逸らし、西の空を見上げた。
「確か黎凪はそう言ってました」
「…それは真か?」
「黎凪はこんなことで嘘は言いません」
「…いささか信じられぬな」
「…私は、きっとそうなる、そんな気がします。三成さんは…知れば知るほど、生きているのが不思議なくらい…儚い」
「儚い…」
「私はあの人が…ほんの些細な事で壊れそうで、怖いです」
村越の言葉に、大谷は再び驚いた。村越が石田に依存しているのは分かっても、そんな風に石田を見ていたとは思わなかった。
村越は大谷を振り返ると、がし、と大谷の手を握った。
「大谷さん。私は、三成さんが壊れなかったのは、大谷さんが生きていたからだと思うんです」
「?!何故我が。三成は言っておろう、全てを失ったとな。我は三成の全てに入っておらぬ。それは甚だ検討違いよ」
「失ってから気が付く事もあります。近くにいる人は、いるのが当たり前だから。大谷さんの存在は、三成さんにとって存在して当たり前の存在です、私はそう思います」
「……ヒヒヒッヒハァッ!!主は面白い事を申すなァ。何故そう思うた?」
大谷は村越の言葉に笑いながらそう尋ねた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年10月 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31