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もうお前を離さない293

「な…」
「姫さんアンタ気でも狂ったのか?!」
「正常です。嘘も貫き通せば真になるとも言うでしょう?」
村越はそう言いながら物騒な笑みを浮かべて刀を構えた。徳川はそんな村越に顔を歪めた。
「何故君はそこまで三成の為に生きる!!」
「!家康、」
「君は三成と同じだ!何故自分の為に生きようとしない?!」
村越は徳川を見て馬鹿にしたように小さく笑った。
「私はそんなできた人間じゃない。勝手に決め付けないでくんない」
「な…?」

「私には三成さんのいない世界に生きる理由がない、だから三成さんを殺そうとする人間は殺す」

村越はそう言い切ると刀を抜き放ち地面を蹴った。一直線に徳川目がけて走りよる。
顔目がけて振られたそれを防ぎ、徳川は村越の目を見る。
「気が狂った、アンタもそう思うの?でもそれを言うならアンタも同じよ。友達裏切って人殺しておいて、平然な顔をして他の友達とは笑い合ってる。信じられない、アンタの方こそ気が狂ってるんじゃないの?」
「…ッ。ワシは、」
「言い訳なんか聞きたくないわ。このきちがい野郎ッ!」
激昂した村越は刀を引くと同時に鞘で徳川の顔を殴り付けた。徳川の目のすぐ横に当たったそれを、徳川は視界が振れるのを感じながらも掴んだ。村越はすかさず鞘を手放し、左回りに体を回しながら徳川のむき出しの腹を狙うが、あっさり避けられてしまう。
石田はそんな村越をやや呆然とみていた。
「………苛烈よな」
「!!刑、部」
その時、ずっと黙っていた大谷がぼそりと呟いた。石田はびくりと僅かに肩を跳ねさせた後、静かに大谷を見た。
「……何故だ刑部」
「…………………」
「何故こんな卑怯な真似をした?」
石田の声は静かだった。大谷は石田を見、そして僅かに目を伏せた。
「……我には主しかおらぬのよ」
「?刑部…?」
「早に我を殺しやれ三成。我は理由を口外するつもりはない故」
大谷はそこまで言うと石田から目を逸らした。石田が大谷に近寄ろうとしたその時。
「痛ぁっ!!」
「!!村越ッ?!」
突如聞こえた村越の声に石田ははっとしたようにそちらを見た。
どうやら長曾我部の破槍が左足を掠めたらしい、白い袴が赤く染まっている。
バランスを崩した村越目がけて長曾我部が破槍を振り上げる。
「―――!!」
石田の足は固まったように動かない。石田は思わず目を閉じた。
―私は長曾我部からあらゆるものを奪った…私に奴を止める権利など…ッ
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!!」
その時、石田の思考を邪魔するが如く、その場に宮野の怒鳴り声が響き渡った。それと同時に、長曾我部と徳川が息を呑んだ。

村越を庇うように割り込んだ宮野の左腕に、咄嗟の事に止められなかった破槍が刺さったのだ。

「黎凪ッ!!」
さっ、と村越の顔が青くなる。長曾我部は慌てて破槍を引き上げたが、宮野の左腕からは血が噴きだした。
「いぃった、刺さった刺さった刺さった!!今までになく血ぃ出てんだけど!!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ?!」
当の本人はどこかふざけているかのような反応をした。ぶんぶんと左腕を振った宮野は、傷口を押さえながら左右を見やった。
「何事にござるか?!」
宮野に遅れて真田も姿を現した。驚愕している真田を余所に宮野はふぅ、と息を吐き出す。
「徳川がいる、なのに三成さんが暴走していない、そして長曾我部が徳川サイドにいる、と…。芽夷、こりゃ大谷さんの企みがバレて長曾我部が殴り込みに来たトコか?」
「!!黎凪分かるの!?」
宮野がさらりと口にした言葉に、村越は驚愕して宮野に近寄った。
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