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もうお前を離さない280

「おい、いし……だっ?!」
「…なんだ元親、こんな時に。貴様は本当に鴉だな」
タイミング悪くその場に現れた長曾我部は、石田を抱き締める雑賀を見て困惑した。石田は反応せず、雑賀は首だけそちらに向けた。
そして小さくため息をつき、腰元に銃を構えた。目で行け、と伝えると、長曾我部は戸惑いながらもその場を離れた。
雑賀はそれを確認すると、ぽんぽんとあやすように、石田の背中を叩いた。



 翌日早朝、上田城では。
「…政宗殿。昨日は申せませんでしたが…なんと礼を申せばよいか…」
夜遅くに到着した為に上田城に泊まった伊達を、真田が1人で送り出していた。頭を下げた真田に伊達は笑う。
「敵に礼を言う奴があるか」
「ま、政宗殿っ」
「…俺は石田を目指す。お前は家康を目指すんだろう?」
「…、そうに、ござろう」
「……お前の女に伝えろ」
「な、ななっ「期待はしている。だが、俺は俺の目的を目指す。だから手伝いはしねぇとな」
「!?な…何を…?!」
伊達は慌てふためく真田にまたくすりと笑った。
「…、アンタには話していないのか?」
「??」
「アンタも同じ夢を望んでいると聞いたぞ」
「…夢…にござるか…?……あ…」
「石田と家康の決着を、片方の死以外でつける、だろ?」
伊達の言葉にようやく真田は合点がいったように頷いた。伊達は真田から視線を外し、空を見た。
「…真田。アンタ、どうやってあいつを連れてきた?」
「!…政宗殿は黎凪の事を…?」
「Yes,I know…。…ま…そんな事はいいか。真田。アンタも、本当にそれを目指すのか?」
「…某にはまだ、見つかっておらぬ答えがあり申す。されど。…仇討ちは…虚無しか残らぬと、ある方が申された。…某も、そう思いまする」
「…Hum.虚無しか残らない…か……」
「…政宗殿………」
「…手間取らせたな。俺はもう行くぜ。…、真田、死ぬなよ」
「!…政宗殿も、また」
真田の言葉に伊達は薄く笑うと、馬にまたがり駆けていった。真田はそれを黙って見送った。
「次会うは、関ヶ原だね」
「!黎凪…」
伊達の姿が見えなくなった時、ぎぃと戸が軋む音がして宮野が出てきた。真田の隣に立ち、伊達が去った方を見つめた。
「……おはよう、幸村」
「…昨夜は眠れたか?」
「うん。布団だったし」
真田は宮野を見下ろすと、隣り合う宮野の右手を握った。宮野は僅かに驚いた後、真田を見上げ、真田の左腕にぎゅうと抱きついた。
真田はそんな宮野に薄く笑い、体を離すと正面から抱き締めた。
「ずっと…ずっと会いたかったぞ…!!」
「うん…!」
2人は誰もいない城壁で、ぎゅうと強く抱き締めあった。宮野は真田の首元に顔を埋め、額を押しつけた。
「幸村あの後大丈夫だった…?戦にかったとか、そういう話は聞いたけど……」
「あぁ。黎凪、お前こそ大丈夫なのか?」
「…、うん。徳川家康とも話せたしね…。……ねぇ幸村」
「なんだ」
「私…止められるかな?この戦」
「…!」
不安げな声に真田は少しだけ驚いた後、抱き締める力を強めた。
「自信を持て。不安になるな。…、できると信じるのだ」
「幸村にしては、前向き思考だね」
「む、俺はそんなに後ろ向きか?」
「後ろ向きでもないけど、そんな前向きでもない」
「むぅ。そうか」
真田は宮野の後ろ髪を弄びながら宮野の頭に顎を乗せた。
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