スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない291

「…さて、」
「刑部…私を裏切ったのか…」
「…要はそういう事よ」
「……」
「さァ、主はどうする?」
大谷は企てが発覚したというのに、清々しい程に落ち着き払っていた。そして、静かな瞳で石田を見つめていた。
石田は黙ったまましばらく大谷を見つめた後、一歩大谷に近寄った。

「待って!!」

刹那。村越がそう叫び大谷の前に立ちふさがったのと石田の刀がその村越の首すれすれで止まったのは同時だった。
石田は何も映していない、ガラス玉のような瞳で村越を見下ろした。大谷や徳川、長曾我部は驚いたように村越を見ている。村越は僅かに震えながら、そしてどこか泣きそうな眼差しで石田を見上げていた。
「…裏切り者には死あるのみ……だから殺す」
「待ってください。許せないのは分かります、あなたが殺すと判断したなら私に止める資格だってない、でも……でも、理由を知りたいとは思わないんですか?!」
「…!」
「私は…正直こんなの信じられなくて…でもきっと事実なんだろうけど……でも、それでも、私は、大谷さんを信じてます、だから、大谷さんが悪意から三成さんを裏切るような事をするとは思えないんです!!」
「…主という奴は…」
大谷は小さく呟いて目を伏せた。石田の腕がぴくりとゆれ、ガラス玉のようであった瞳にも僅かに光が戻る。
「…悪意だろうがなんだろうが裏切りは裏切りだ」
「!!…例えそれが三成さんを思っての事でも許せないんですか?!」
「私を思って…だと……?」
「…あの子は…」
「姫さん何言ってやがる!大谷はそんな野郎じゃねぇ!!」
「ッ!?…何よ…ッ!!」
長曾我部の言葉を耳にした村越は一瞬驚いたように長曾我部を見た後、先まで泣きそうだった瞳を怒りに染めた。
「…あなたに何が分かるっていうんです。あなたみたいにバカやって兄貴兄貴慕われてるあなたに大谷さんの何が分かるっていうんです!!」
「な?!」
「自分の事を棚に上げて偉そうに…!アンタだって徳川の事を許せないだのなんだの言っておいて今は仲良しこよし?!自分だって徳川を信用しないで旗が落ちてただけで犯人だと決め付けたくせに!!信用しなかった自分は悪くなくて、騙した大谷さんだけ悪いわけ!?」
村越はぐるぐると混乱していたものが爆発したのかそう一気にまくし立て、突然の剣幕にいつもの瞳に戻り呆気に取られていた石田の刀を掴んで押し退けずかずかと長曾我部に歩み寄った。
「騙しただのなんだの言ってたけど、国主でありながら呑気に遊び歩いてるからこうなったんでしょ?!少しはアンタ自身も反省したらどうなのよ!!」
「な…なんだと?!」
「お、落ち着け2人とも」
「アンタは尚のこと入ってこないでよ!!」
村越と長曾我部の怒りのボルテージが上がっていくのを感じた徳川は慌てて2人を止めに入るが、村越に刀を向けられ一瞬怯む。
村越は不愉快、嫌悪そして怒りを隠さない瞳で徳川を睨んだ。
「そもそも……そもそもアンタが、アンタが三成さんを裏切りさえしなければこんな事にはならなかった!!三成さんが苦しむ事も四国が壊滅する事もこんなでかい戦になる事も!!!!」
「!!」
村越に遠慮なくずけずけと言われた言葉に徳川を目を見開き、そして僅かに俯いた。
「全ての元凶はアンタでしょ、徳川家康!!善人ぶった顔しないでよ!!」
「…ぃい加減にしやがれぇぇ!!」
ついに長曾我部がキレた。長曾我部は破槍を振り上げ容赦なく村越に向かって叩きつける。村越はそれを後ろに跳躍する事でかわし、刀を抜いた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年10月 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31