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見えないはずの右目が49

それから四半時が経ち、稽古が終わった。汗まみれの頭を、わしわしと借りた手拭いで拭いた。傷が心なしか痛んだが、それは気にならない程、稽古は楽しかった。
「梵天丸様ぁーまた来て下さいねー!」
「…うん!」
手を振ってくれる男達に梵天丸は笑って手を振り返した。小十郎はそんな梵天丸の顔にほっ、と安堵の息を漏らす。
「梵天丸様、そろそろ部屋に戻られないと人が集まります」
「うん」
道場の傍には食事処がある。まもなく午の刻になる。故に人が集まりつつあるのだ。
二人は少し急ぎ足で離れに帰った。
「…小十郎!見せてもらいたいものがあるんだけど…」
「?何でしょうか?」
うーうーと小さく唸りながら頭を振っていたのだが、梵天丸は少し迷いながらいった。
「…こ、小十郎の」
「?」
「小十郎の畑が見たいっ!」
その顔は迷いが吹っ切れたのか、顔がキラキラしていた。小十郎は面食らい少し恥ずかしい気もあったが、そのキラキラに勝てず梵天丸を畑に連れていった。


「うわぁー」
広い畑に梵天丸の声が広がる。
「今日は大晦日故、葱を採りましょうか」
「ネギ?…なんで?」
「大晦日は年越し蕎麦を食べるのが習わし。蕎麦の薬味には葱が一番でございます故」
「葱はうどんにも蕎麦にも入れるのか?」
「葱は薬味としては様々な物に合いますよ。冷奴に伸せても、茶漬けに入れてもおいしゅうございます」
「そんなものなのか…」
梵天丸は小十郎と共に葱の生えている場所まで行き、葱を採集しながらそう呟いたのだった。
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