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見えないはずの右目が27

「…お前体冷たい……」
抱きついた小十郎の体は氷のような冷たさだった。
「!も、申し訳ありません」
「お前…ずっと外にいたのか…?」
背中を撫でてくれていた小十郎の手を、梵天丸は罪悪感を覚えながら見つめた。
「…自室に戻るわけにもいきませぬ故」
真面目に返す小十郎に、
「…お前はやっぱり変だ」
と、自然に口を出た。小十郎は少し困った顔をする。
「外にいると申しましたからには違えるわけにはまいりませぬ」
もはや変じゃなくて馬鹿だ、と呟くとさらに困ったような顔をしたが、笑みは消えていなかった。
「…おっと。そろそろ朝餉の時刻になりまするな。用意させて来ます」
そう言って立ち上がろうとする小十郎に、ふと常に思っている事を尋ねてみた。
「お前はいつもどこで食べてるんだ?」
「は?…厨房の方でささっと」

「…一緒に食べないか?」

もっと、小十郎を知るいい機会だ。
そう思った梵天丸は勇気を振り絞ってそう言った。
「…は?」
相当意外だったらしく立ち上がろうとした格好のまま固まっている。
「……っ!一緒に食え!」
二度も言うのは恥ずかしい。つい顔を真っ赤にさせて怒鳴った。小十郎はしばらく呆然としていたが笑みを浮かべ頷いた。
「分かりました。支度をしておきます。まだ早い、もうしばしお休みくだされ」
そう言われて何時もより早く起きたことを思い出す。突然眠気に襲われたので、目を擦り小さく頷く。
小十郎はそれを確認したのち、足を庇いながら離れから去っていった。

梵天丸は自室に戻って毛布にくるまった。
よかった
小十郎がいてくれてよかった。
小十郎は信じて良いんだきっと。
きっと、小十郎なら、ずっと

それでもこれは。

す、と静かに手を右目に添えた。
これはまだ駄目だ…

梵天丸は静かに目を伏せた。
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