2010-1-1 23:50
…どうしよう
梵天丸は障子ごしに見える小十郎の後ろ姿に迷いが生じる。
あれから二刻程時間が経った。小十郎はずっと黙ったまま、外の雪が吹き荒れる中で座っている。立ち去る気配はない。
いくらなんでも、寒いだろう。というより、風邪をひくだろう。
なんでこうまでして、俺を見捨てないのだろう。
こんな生意気な子供になど、仕えたくないだろう。
梵天丸の中に様々な思いが渦巻く。そして不意にある思いが浮かんだ。
片倉小十郎という男なら、信用しても、信じても見捨てないで、ずっと傍にいてくれるんじゃないだろうか。
体が勝手に動き、障子に手が触れた。
だが、やはり恐れの方が強く、障子は開かずに終わった。
だというのに
「梵天丸様?如何なさいましたか?」
突然小十郎の声がした。障子に手が触れた事で、何か用か、と思ったようだ。そんな察しのいい小十郎に驚愕した。
「…いつまでもそんな所にいると風邪をひくぞ」
口から思った事が自然にこぼれ出た。
「!…ご心配には及びません。体力だけは自信があります故!」
すぐに嬉しそうな声が返ってきた。だがその声は震えていた。
梵天丸は、体が勝手に動くというのがどういうことか分かった気がした。
すぱん、と音がする程勢い良く。
梵天丸は障子を開いていた。
小十郎はまた、目を見開いて梵天丸を見上げていた。その手や顔は寒さからか、かすかに赤くなっていた。
「…は、入れ」
前にいる小十郎より、顔は真っ赤になっている事だろう。
梵天丸は恥ずかしさを耐え、なんとかそう言った。
「…?よろしいのですか?」
「ううううるさいっ!いいから入れっ風邪ひくぞ!」
びっくりしたように尋ねる小十郎にさらに顔は赤くなり。
大声で言い切った後勢い良く後ろに向く。だが、小十郎がすぐに立ち上がり、中に入ったのは分かった。
そんな小十郎の行動に、なぜか安心した自分がいるのに気が付き、梵天丸は驚いた。