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見えないはずの右目が32

「梵天丸様、…大丈夫でございますか?」
どことなく顔色の悪い梵天丸を案じ、再び大丈夫か、と小十郎が尋ねた。
梵天丸は何も言わずに頷くと小十郎の着物から手を離した。梵天丸はぐいと目元を拭った。
小十郎は心配そうに梵天丸を見ていたので、梵天丸は
「…梵天は、大丈夫だ」
そう、答えた。
小十郎は安心したように笑ったので、梵天丸は胸を締め付けられる思いだった。

…俺が、なんとしても救わなければ…

梵天丸は小さく拳を握った。



−夜中。
梵天丸は寝たふりをし、小十郎がいなくなったのを見計らって上にたまたま小十郎が置いていった羽織を羽織った。
静かに部屋を抜け、離れの入口に出た。そこで、両手くらいの大きさの袋を見つけた。
「……?」
なんだ…?
袋の口を解き、中を見ると…

「…かた、くら?」

小さな小十郎の、ぬいぐるみだった。器用な者が作ったらしく、とても似ている。
大の字の形をしていて、片手には刀を握っている。
「…可愛い」
ついそんな言葉がこぼれおちる。梵天丸は片倉人形をぎゅう、と抱き締めた。

俺には小十郎が必要なんだ。
小十郎を、なんとしても守る!

梵天丸はすぅっ、と息を吸い込むと、入ってから一度も出た事のなかった離れから足を踏み出した。
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