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見えないはずの右目が48

しばらくして稽古が再開された。梵天丸は道場の隅に座っていたが、いつの間にか小十郎が傍にやってきていた。心なしか息は乱れていたが、その顔に汗はあまり浮かんでいない。寧ろ、顔に巻かれた包帯を緩まないようにする為にあまり力を入れていなかったのかもしれない。
「小十郎。稽古はもういいのか…?」
「ええ、今はかかり稽古を始めましたので。行ってこいと追い出されてしまいましてね」
小十郎は苦笑しながらも内心では部下が何を考えているのか分かっている。

ったく、雪之条め…俺に稽古をしてもらいてぇのか梵天丸様と話させてぇのかはっきりしやがれあの馬鹿

内心で毒づきながら小十郎は梵天丸の隣に座った。梵天丸は嬉しそうに小十郎に擦り寄る。小十郎は梵天丸の頭を撫でてやった。
「……なぁ小十郎」
「?」
「梵天も、稽古をつければ強くなれるか?」
ぎゅ、と小十郎の着物の裾を掴みながら見上げる梵天丸は緊張で堅くなっていた。小十郎は少し固まった後、笑みを浮かべてやる。
「ええ、当然でございます。なんなら、おやりになりますか?」
「本当か!?」
「小十郎様ぁー、梵天丸様おやりになるんすかー?」
「てめえは集中しろ雪之条ォ!」
気が散ってばかりの雪之条を怒鳴りつけた後、梵天丸の体に合った竹刀を探しだして渡してやった。梵天丸はそわそわしながらそれを握る。小十郎は梵天丸の向かいに竹刀を構えて立ち、稽古を始めた。
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