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見えないはずの右目が34

「……義姫?」
驚いたように輝宗は入ってきた妻を見上げた。
義姫は髪を乱れさせたまま、ずかずかと二人に近寄る。輝宗は梵天丸の膝の下に腕を通して梵天丸を抱えあげた。
「義姫、貴様何故梵天丸を殺そうとした?」
強く義姫を睨み付ける輝宗だが、義姫の耳に彼の言葉は届いていないようだった。梵天丸だけを、ギラギラした目で睨んでいる。
「……この化物め…!」
「!義姫!?」
突然義姫は輝宗の腕から梵天丸を突き落とした。梵天丸は避けることも出来ずにそのまま背中から落ちた。再び義姫が懐刀を抜く。
「殺す…!」
「義姫!止めんか!」
懐刀を握る義姫の腕を取り押さえるが、義姫は暴れだす。輝宗は強く両の手首を握りしめると、そのまま義姫を壁に押さえつけた。
「…っ、梵天丸!大丈夫か!?」
「……つぅっ…。は、い…」
叩きつけられた衝撃は大きかったが、なんとか立ち上がる。
義姫はまだ梵天丸を睨んでいる。
「義姫!お主自分が何をしておるか分かっているのか!」
「化物は殺すものでございましょう!?だから殺すまで!」
どこにそんな力があったのか、義姫は勢いよく輝宗を突き飛ばし拘束を解くと梵天丸に走りより、その首を締めた。
「!義姫ェ!」
「……か、はっ…」

息ができない…

朦朧としはじめる視界。薄れ行く意識の中に浮かぶのは片倉小十郎ただ一人。

まだ…ありがとうって、言ってない…


まだ、死にたくない
また、小十郎に会いたい!


その思いが、梵天丸に力を与えた。
なんとか掴み掛かる義姫の手首を掴み、離そうとする。女性とは思えない力強さだったが懸命に押し退けようとした。

その時だ

「梵天丸様!!!!」

梵天丸の救世主が、現れた。
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