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見えないはずの右目が36

小十郎は目の前で顔を青くさせながらも心配させまい、とはんなりと笑みを浮かべる梵天丸に目を丸くした。梵天丸は未だに乱れる息を整えながらも小十郎にしがみついた。
(あの時の「今度は、俺が」というのはこの事だったのか…!)
数刻前の梵天丸の言葉が小十郎の頭の中に蘇る。
「よかった…っ無事で…」
「何をおっしゃいます…!梵天丸様、大丈夫なのでございますか?!」
しがみついてきた梵天丸を、小十郎はしっかりと抱きしめ返してやる。その体はとても冷たかった。自分の腑甲斐なさに、小十郎は泣きたくなる。梵天丸は小十郎の温もりが気持ち良さそうに、顔を小十郎の胸に埋めた。
「小十郎…」
「…っ、なんでございますか?」

「ずっと…梵天と一緒に、いてくれるか…?」

埋めていた顔を上げる。小十郎を見上げる梵天丸の目は、心なしか潤んでいた。小十郎は間髪を入れずに言った。

「梵天丸様が望まれるならば、どこまでも!」

「…っ、ありがとう…っ!」
梵天丸は涙を一筋流し、小十郎に抱きついた。小十郎も涙腺が緩むのを感じながら、梵天丸を抱きしめ返した。
梵天丸はずっと泣いていた。小十郎にはその涙にどんな思いがあるのか、全てを分かる事などは出来ない。それでも小十郎は。

「小十郎はずっと梵天丸様の側におりまする…。例え梵天丸様が全てに憎まれようとも、ずっと」

「…本当に?」
そう言いながら梵天丸が小十郎を見上げた時?


右目を覆っていた包帯が、取れた。
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