スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

見えないはずの右目が35

輝宗が義姫を梵天丸から離したと同時に力強い腕が梵天丸を包み込む。
「こ、じゅう…ろ…」
急に入ってきた酸素に息も絶え絶えになりながらなんとかその名を呼ぶ。
「梵天丸様!」
開け放された障子から姿を現したのは小十郎だった。いつも落ち着いている小十郎が顔面蒼白にして梵天丸を抱きしめている。
「ご無事であられましたか…っ」
泣き出しそうに顔を歪める小十郎

止めろ、そんな顔は見たくない

「こじゅう…ろ……梵、天は、大丈、夫…」
「梵天丸様…っ」
抱きしめる力が増す。小十郎の少しばかり短い髪が梵天丸の頬を擽る。
「小十郎、梵天丸を義姫から離す必要がある。頼めるな?!」
突如かかった輝宗の声に小十郎は、
「はっ!」
強く返答すると梵天丸を腕のなかに抱えたまま立ち上がり、走りだした。
「こ、こじゅうろっ人が…っ!」
梵天丸は周りを見て小十郎にしがみついた。騒ぎを聞きつけた者達が駆け付けてきたのだ。小十郎もちっ、と腹立たしげに舌を打つ。
「梵天丸様。離れまで一気に走ります。掴まっていてくだされ」
「う、うんっ」
小十郎は梵天丸が羽織っていた羽織で梵天丸を包み込み、しっかりと抱き抱える。そして勢い良く走りだした。草鞋をはかぬまま庭に飛び降り、まわりの目を気にせずにそのまま離れへと向かう。
「速いな…っ!」
「言ったでござりましょう?体力だけは自信がありますと!」
息を乱さずに離れまで到達した。小十郎はよごれた足袋を脱ぎ裸足になってから座敷に上がった。
「?梵天丸様、その人形は…?」
隠していた小十郎人形に気付いたようだ。梵天丸は精一杯の笑顔を浮かべて言った。
「小十郎人形。…梵天の宝物だ」
<<prev next>>
カレンダー
<< 2010年01月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31