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見えないはずの右目が23

呆れるだろうな

梵天丸はそう思った。
藩主を継ぐべき身であるというのに、出した言葉は逃げの言葉。
跡継ぎとしてあるまじき言葉である。

例え小十郎がいくら優しいといえども、これには激怒するだろう。

それが分かっていても、梵天丸は弁解をするつもりにはならなかった。

だが、小十郎は

またもや、梵天丸の予想を裏切った。

「旅に出るときはぜひ、お供させていただきたいものでございますなぁ」
小十郎の口から飛び出したのは、否定でも同感でもない言葉。

勢い良く振り返れば、薄く笑みを浮かべていた。だが、勢い良く振り返った事におどろいたらしくすぐに笑みは消えてしまったが途端に慌てた表情を浮かべる。
「あ、いえ、その〜…」

やはり、こいつは。

「…昨日から、思ってたが」
「?」
「お前、変な奴だな」
「!!」
顔に出る、というのはこういう事なのだろう。小十郎の顔にそんなっ!と書いてあった。
そんな小十郎に、笑いそうになりながら、梵天丸は口を開いた。

唯一いえる、本当に思っている事。

「お前みたいな奴は初めてだ。…でも、嫌いじゃない」

素直に笑みが口元に浮かんだ。視線の先にある小十郎の顔は、ややあっけにとられた顔をしている。

今までと全く違う、侍。
弱気な事を責めないで、こんな俺でも離れないと言ってくれて。


「…でも嫌いだ」
「剥カ様でございますか…」
だがまだ人を信用しきれない梵天丸は、照れ隠しにか、嫌いだと言ってしまうのだった。
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