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見えないはずの右目が29

二人で黙々と箸を進める。
ちら、と小十郎を仰ぎ見れば軽く目を伏せ、行儀よく白米を口に運んでいた。伏せた目の、思いの外長い睫毛にかっこいい、と心の中で呟く。
その時小十郎の動きが止まり、じっと梵天丸の膳を見始めた。なんだ?とたじたじしていると、す、とやや困ったような呆れたような目を向けてきた。
「…梵天丸様。葱はお嫌いでございますか」
箸で小十郎が指したのは、魚に添えられていた葱。
「………辛いし苦いし…嫌い」
「…小十郎は好物でございます」
「…どこがうまいんだ?」
「うどんなどに入れたりするとおいしゅうございますよ」
「うどん…?」
う、ど、ん、?
…ってなんだ?
「…では明日の昼飯はうどんに致しましょうか」
「それは食べ物なのか?」
「…食べ物以外に何故葱を入れるのでございますか…;」
呆れたような笑いだしそうな表情になる小十郎。そんな小十郎にむっともしたが、楽しくなってきた。
少しずつ、梵天丸も小十郎に心を開けているのだろう。
「うどんとはどんな食べ物だ?」
「うーむ…蕎麦は分かりますか?」
「ああ。年越し蕎麦なら」
「あれが白く少し太くなったものでございます」
「白いのか…!?」
白い食物!?
そんなもの、この世にあるのか…。そして、麺。
そうでございますよーと返す小十郎と、たわいのない会話が弾む。

楽しい
久しぶりに感じる、感情。




これがいつまでも続けばよかったのに
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