スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

見えないはずの右目が39

「貴様!自分が何をしでかしたのか分かっておるのか!!」
ばき、と音をさせて小十郎は殴られた。


梵天丸の右目を突いた直後。城にいた家臣達が集まり、梵天丸は医師の元へ、小十郎は庭に連れ出された。そして暴行を受けつつ今に至る。
殴られたせいで出血した口元を拭う。その視線が気に食わなかったのか、また殴られる。小十郎は甘んじてそれを受けて入るが相変わらず視線の力は強い。
「分かっておりますが」
「きっ、貴様…!」
再び家臣達が腕を上げた時、輝宗が現れた。
「……御館様」
「……………小十郎、一体何を考えておるのだ」
「…………」
「梵天丸の右目を、脇差しで突いたそうだな」
「……はい」
小十郎は静かに輝宗を見上げる。その顔は険しかった。
「輝宗様、こやつは梵天丸を殺そうと…「黙れ。わしは小十郎と話しておる」
輝宗が一括すると家臣の男は黙った。輝宗は、静かに口を開く。
「……梵天丸の出血が酷い」
「………」
「もし、梵天丸が死んだ場合、どう責任を取るつもりだ」
小十郎の前で輝宗の手が震えているのが分かった。小十郎は迷わず口を開く。
「この首、好きにしてくだされ」
「何?」
取り巻きの家臣の中にもどよめきが広がる。
「打ち落としさらし首にされても、構いませぬ」
「切腹と言わず、さらし首などというものになっても構わぬとはな…つくづく真っ直ぐな男よ」
輝宗が呆れたような驚いたような顔を浮かべる。
「梵天丸様を死なせたとした時。切腹を許される罪ではないと分かっております」
「分かっていて何故やった!?」
ついに輝宗が叫ぶ。その目にはうっすらと涙が浮かんでいるようにも見える。小十郎は目を逸らさずに言った。

「梵天丸様を苦しめる物は全て、無くしてしまいたいからでございます」

「………!」
輝宗が言葉に詰まった。まわりの者も、しん、としている。
「小十郎…貴様」
「それだけでございます」
小十郎はそう言うと、それ以上何も言わなかった。


しばらくして、小十郎は梵天丸の安否が分かるまで地下牢に投獄される事となった。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2010年01月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31