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貴方も私も人じゃない101



「……鎮流殿!」
家康の鋭い声にはっと目を覚ます。目の前には忍らしき装束の人影が、刀を振り上げて立っていた。
「ー!」
ー殺される!
合気道で鍛えたはずだが、咄嗟に体を動かすことができない。相手の動きがやけにスローに見えるのに、体はまるで動かない。
「(…ダメだ、死ぬ)」
体は動かないが頭は動く。体が動かせないならもうやられる、鎮流の頭はこんな時でも冷静で、そう判断を下した。
「させるか!」
「!」
だが相手の刀が鎮流に到達する前に、家康がその間に割り込むように飛び込み、カァン、と高い音を立てて刀が家康の籠手で防がれた。
家康はその後に踏み込んだ右足を、ぐ、と軸足にすると、体ごと回すように勢いをつけて右の拳を突き出した。家康の拳は空を切り、忍は数歩下がって間合いを抜けた。
「鎮流殿ッ!動けるか!?」
家康の怒鳴るような大声に、びくっ、と体がはね、動かせるようになった。鎮流はすぐさま立ち上がり、脇のホルスターから一丁銃を抜き取った。
家康は鎮流が立ったのを確認すると、忍めがけて踏み込んだ。
「はあぁ!」
忍が振りかざした刀を持つ手を出小手を取るかのように殴り飛ばした。めきゃりと鈍い音がし、刀が弾け飛ぶ。家康は殴り抜いたその勢いで体を回し、先程殴ったのと反対の腕で肘鉄を食らわす。肘がどうやら顎にクリーンヒットしたらしい、忍は頭を揺らしてがくんと膝をついた。
「よし…鎮流ど、」
これで大丈夫か、と鎮流を振り返った家康の目の前に刀が迫る。
「!」
家康は咄嗟に上体を仰け反らせて刀を避けたが、無防備な体を思い切り蹴り飛ばされ、鎮流との距離を離されてしまった。
「…ッ」
鎮流は銃を両手に構え、忍を見据えた。
ー装填は既にしてある
なかなか不便な銃ではあったが、ホルスターには既に後は引き金を引くだけの状態で入れてあった。鎮流は僅かに息を吸い込み、向かってくる忍を見据える。
ー確か狙いは少し下…
以前半兵衛が狙いを定めてくれた時の事を思いだし、相手の首の辺りを狙う。体の中心線を狙えばどこかしらの急所には当てられる。だが、この古い銃では横にぶれないとも限らない。
ーどうすればいい。外せば私は負ける。
鎮流はやけに冷静な頭で考えた。
忍はそんな様子に、鎮流が銃を使いなれていないだろうと油断しているのか、銃を向けられても気にせず向かってくる。
「ッ、鎮流殿!!」
家康の焦ったような叫び声が聞こえる。鎮流の間合いに入った忍は刀を振り上げた。
振り下ろす腕は今の鎮流には早すぎて目に追えない。だが。
「ッ!!」
鎮流は一歩踏み出して間合いを詰めた。間合いを詰めては合気道は使えないが、銃はその限りではない。
鎮流は相手の首に、ごり、銃口を押し付けた。喉仏の動きが銃越しに伝わる。
「…ゼロ距離射撃なら」
ー外さない!
鎮流は引き金を引いた。
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