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貴方も私も人じゃない85

「…さ!策作りの続きを始めよう、君も手伝ってくれ」
「はい!ですが、半兵衛様は先にお食事を!」
「んもう、分かったよ」
半兵衛は鎮流の言葉に小さく笑った。



 翌日。
「鎮流くーん」
「?はい、なんでしょう半兵衛様」
鎮流が半兵衛に指示された通りに武器整備の指示をしていると、当の半兵衛がやって来た。半兵衛はすまなそうに鎮流を見る。
「急かさせてすまないんだけど、君は今から伊香に発ってくれないか?」
「伊香…?……あ、確か、不穏な動きありとのことで家康様三成様が向かわれた場所ですか?」
鎮流は僅かに驚いたように半兵衛を見、持っていた紙を近くの机に置いた。
そうしている間に半兵衛がいくつかの紙の束を持って鎮流に近寄った。
「あぁ。不穏な動き…それに合わせて少し気になる動きが出てきた。何か起こっても三成君と家康君がいるから勿論大丈夫だとは思うけど、今面倒なことになるのは避けたいからね。予想される動きと対応策をいくつか考えておいた。もし何かあったら、これを参考にして三人で対応に当たってほしいんだ。想定外のことだったら君に頼るしかないけど」
鎮流は半兵衛が持っていた地図に書き込まれた動きを見て、僅かに眉間を寄せた。
「…近辺の残党勢力の動き…?…承知いたしました、向かいます」
「あぁ、それと君が構わなかったら源三君は置いていってくれないかな?」
「?構いません、分かりました」
「じゃあすぐに出発してくれ、そうすれば今日中には追い付けるだろう。護衛の兵を何人か付かせるから、東門から出てくれ」
「はい!」
鎮流は半兵衛の言葉に即座に返答すると頭を下げ、すぐに出立の準備に向かった。
少し離れたところにいた源三は、訝しげに半兵衛を見ていた。半兵衛はその視線に気がつくと、にこり、と口元に笑みを作った。
「…私めに何用でございましょうか、竹中様」
「…、君には少し話したいことがあるんだよ。後で呼ぶ、それまで鎮流君の作業を引き継いでくれるかな?」
「………承知いたしました」
源三は鎮流の後ろ姿を不安げに見送りながらも、鎮流の作業を引き継いだ。
「…、お嬢様……」
一抹の不安を源三は拭うことはできなかった。
そんな源三の気持ちは露知らず、鎮流はそれから少しして数人の兵らと共に大阪城を出た。



 その日の夕暮れ。鎮流は近江に移動した家康と三成の隊に合流した。
二人は戻ってきた鎮流を意外そうに出迎えた。
「随分早かったな、鎮流殿…昨日の今日じゃないか」
「ええ、流石に腰が疲れました」
「秀吉様にお目通りは叶ったのか?」
「はい!とても素晴らしいお方でした」
「ふん、当然だ」
「それにしたって早すぎやしないか?なんでこんなに?」
不思議そうな家康の言葉に鎮流は肩にかけていた鞄から半兵衛に渡された紙束を取り出した。
「半兵衛様より、こちらで気になる動きがある、対処してほしいと」
「気になる動き?」
「確かに豊臣に敵対の意思を持つ者がいるのは間違いない、だがそれに加えて気になる動き、と?」
「そのようです。こちらに到着してから今までの経過をお教え願えますか」
「分かった!」
鎮流の口振りに二人は頷き、三人は本陣へと向かった。
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