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貴方も私も人じゃない95

「…、だからこそ、戦は早く終わらなきゃならないんだ」
「…そうね」
家康は握り飯を食べ終えた手を、ぐ、と握りしめた。鎮流は家康をちらり、と見てからふぅと息をついた。
「……戦なんて、なくなるなんてありえないけれど…」
「?なんだ?」
「いいえ、なんでもない。…貴方は、戦のない世になったら、何がしたい?」
「うん?戦が終わったら、か?そうだなぁ…色々やりたいぞ!友人に会いに行ったり、色んな国を巡って絆を結んだりしたい、そう思う!」
「…ふふっ、意外と普通なことなのね」
「ん?そうか?まぁ確かに、派手ではないかもなぁ…それでも、その普通もなかなか出来ないから…」
「…、それもそうね」
鎮流の賛同を得られたのが嬉しかったか、家康はどこか照れたように笑った。


 二人はその後、何も話さず、しばらく座って休憩した。家康は首を上にあげ、ふぅ、と小さく深呼吸する。そこで、木の上に小さな雀がいることに気がついた。
鎮流は小鳥は好きだろうか。思えば、自分はろくに鎮流が好きなものも知らない、家康はそう思った。
「…なぁ、しず……」
そこで尋ねてみようと顔をそちらに向けたと同時に、ことん、と鎮流の頭が家康の肩に落ちてきた。驚いて鎮流の様子を伺うと、鎮流はすやすやと小さな寝息をたてて眠っていた。
「…なんだ、寝てたのか…。…、確かに昨日から、最初の仕事で張り詰めていたようだったしな…」
家康は鎮流が凭れたのと反対側の手で、小さく鎮流の頭を撫でた。さらさらとした女性らしい髪質に、思わず指をからめる。
「……ん………」
鎮流はその手が気持ちよかったのか、小さく声をあげながらもぐり、と頭を家康の肩に押し付けた。子供っぽいそんな所作に家康は思わず顔をほころばせた。
「…可愛い人だなぁ……あなたみたいな女子ははじめてだ。…なんだろうな」
家康は頭においていた手を下に移し、鎮流の顔が見えるように僅かに鎮流の顔をあげた。目は伏せられ、僅かに長い睫毛が目につく。
家康は目を伏せ、ぐり、と頭を押し付けるように鎮流の額に合わせた。
「……この気持ちはなんだろう。あなたになら、この気持ちも分かるんだろうか?…、あなたといると、不思議と心が安らぐんだ……忠勝や、忠次とも違う、温かさ……」
家康は薄く目を開けた。目の前には鎮流の顔がある。
家康は鎮流が起きないように、そっと鎮流の顔を撫でた。
「でも、今のあなたにそんなことを話したら、邪魔になってしまいそうだな?だから、あなたが見習いじゃなくて軍師に…ワシの軍の軍師になったら、この気持ちを話すことにするよ。その時にはあなたも、ワシに過去を話してくれるようになってると、信じて……」
家康はそう呟くようにいうと、頭を離し、僅かな休息を楽しむことにした。
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