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貴方も私も人じゃない86

「…大体把握したのはこんな感じだな」
「……成る程。となると、この辺りの者たちは本隊が移動した辺りで動き出しそうですね」
鎮流は二人からの報告を聞き、あれこれと手元の地図に書き込みながらそう呟いた。二人は鎮流の言葉に顔を見合わせた。
「そうなのか?どうして?」
「ここ伊香は大阪から近い位置にあります。三成様家康様の別動隊は、彼らにとって数でいえば脅威といえるほどのものではないでしょうが、下手に攻め出せば大阪から後ろを取られる…」
「…確かに、半兵衛殿が気になっていたように、武器や食糧の確保が簡単に見てとれた。ってことは…」
「間違いなく、戦う構えでいるようだな」
「豊臣の威力は相手もよく知り得ていることでしょう。半兵衛様もおられた先の行軍で何も動いてなかったことからみても、勝機無く動きはしないでしょう。彼らが動くとすれば、秀吉様と半兵衛様のおられる本隊が大阪を離れ、かつここより東に離れた時のみ」
「成る程な」
「家康!」
二人が納得したように頷いた時、本陣の陣幕をばさりと捲り入ってきた男がいた。
鎮流がそちらを振り返れば、半兵衛と同じように白を基調としながら、しかしオレンジ色の髪や大きな飾りをもち、太股を露出させているという正反対の雰囲気の男がいた。
鎮流は見たことがない。相手も訝しげに鎮流を見、家康を見た。
「おい家康、なんで女が本陣にいるんだ?」
「たっ忠次!!ちょちょちょ、」
「?」
「…忠次…あぁ、酒井忠次殿でしょうか?」
鎮流はしばし記憶を探り、昨日教えられた編隊の中で見た名前であることに気が付いた。フルネームを告げられた男、酒井忠次は驚いたように鎮流を振り返った。
「なんでアンタ俺の名前、」
「確か家康様の徳川軍別動隊の隊長殿…家康様が先の行軍の際に、別行動でこちらへ来ていた方でしたね」
「!」
「お初にお目にかかります、豊臣軍軍師見習いの鎮流と申します。今後のこちらでの指揮を手伝うよう半兵衛様に命ぜられ、本日参りました次第です。以後お見知りおきを」
「はぁ?!軍師見習いって…女が!?」
「忠次!!」
不躾な忠次の言葉に三成は僅かに眉間を寄せ、家康は焦ったように怒鳴った。
忠次は家康の怒鳴り声にきょとんと家康を見ている。先の発言を悪いとは思っていないようだ。
鎮流はくすくすと笑った。
「構いません家康様、こうした反応は予想の範疇です」
「いっ…うぅん……」
「酒井“殿”、お気持ちは分からなくもないところですが私が参加することは半兵衛様の命でもあります、指示には従っていただきますよ」
「!」
鎮流がほがらかに言いながらも口にした挑発的な言葉に忠次はムッとしたように鎮流を見た。家康はそんな忠次の態度にあわあわとしている。
鎮流はそんな家康を見かねてか、ふっ、と小さく笑みを作り、忠次に近寄った。鎮流の行動に僅かに面食らう忠次の耳元に鎮流は口を寄せた。
「…貴方が私をどう思うかは別ですが、その行動如何によっては家康様に迷惑が及ぶことをお忘れ無く。私は豊臣軍に属する立場ですから」
「!!てめぇ、」
「あーもう!!た!だ!つ!ぐ!!」
「三成様、この隊の物資も一応確認しておきたいのですが」
「……分かった、案内しよう」
三成は鎮流の行動にどこか楽しげに口角を上げた後、家康の肩をぽんと叩き、鎮流を案内するべく鎮流に連れ添って本陣を出た。
家康は二人が出ていったあとに、はぁ、と深々とため息をついた。
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