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貴方も私も人じゃない92

「それはさておき、別に開き直ったつもりはございません。あくまで客観的観点での話です」
「…客観的、ですか」
「殿方はどうかは知りませんが、女性の八割がたは猫を被っていると思った方がいいですよ。それも含めて、その人間であるわけですが…まぁそこをどう受け入れるかは殿方の器の大きさの問題でしょうか」
「…………」
「ご質問は以上ですか?」
「…もう1つ。アンタは、豊臣の軍師なのか?」
「……、と、仰いますと」
「家康が拾ってきたからって、家康の元につくのか、って話だ」
ーなるほど、自分達のところに来るんじゃないかと警戒しているのか。
鎮流はふ、とそう思った。色々と思うところがありながらも、それを表情には出さずに鎮流は忠次の目を見た。
「………確定してはいません。家康様には是非と言われていますが」
「!………そうか…。……、失礼しました軍師殿、お手を煩わせまして」
「いいえ。ご参考になれば」
「!…、失礼しました」
忠次はそう言うと、礼をして陣を出ていった。鎮流は静かにその背中を見送った。
「…、まぁ、警戒するのは当然…でも」
鎮流はぼそり、とそう呟いた。
ふと気になってきたのだ。半兵衛が自分に多くを語った理由が。
「………」
病気のことを自分が察したからだろうか。
鎮流は目を閉じる。
「…、違う、きっとこれは、賭けだ」
鎮流はそう小さく呟いた。先の短い半兵衛が、仕掛けた賭けなのだと。
「……それ以外に考えられない…」
「?何がだ」
「、三成様」
ぽつり、と呟いた言葉に、いなかったはずの三成が反応したものだから、鎮流は僅かに驚いて三成を振り返った。
三成は訝しげに鎮流を見ている。鎮流は居住まいをただした。
「なんでもありません、いかがなさいました」
「あぁ。指示を終えた、後は適宜待機だ」
「ありがとうございます。三成様も折を見て休憩してください」
「…貴様は何をする?」
「私ですか?」
ふぅ、と息をつきながら三成は鎮流にそう尋ねた。鎮流はふ、と僅かに考え込む。
「…、生の情報が欲しい、少し近辺の様子を見て回りたいと」
「!…、誰か護衛をつけていけ」
「ええ、どなたがよろしいか…」
「ならワシがいこう!」
誰を護衛につけようか、と悩んでいるとひょっこり陣に戻ってきた家康が、浮き浮きとそう声をかけた。三成と鎮流は僅かに驚いたように家康を振り返り、そして顔を見合わせた。
「…貴様の格好は目立ちすぎる」
「なら装いを変えればいいだけだろ?それに、鎮流殿の事が敵方に知れているとは思わないが、内通者がいるかもしれないならば知られている可能性があるだろう?言い方は悪いが、ただの兵じゃ若干不安だ」
「……一理ある。なまじ一兵卒に任せるのは危険か」
「三成じゃあ、その髪を隠せないだろ?だからワシが行くよ。ワシも自分の目でこの辺りの地形を見ておきたいし。一石二鳥ってやつだ!」
「……、ふん、勝手にしろ。鎮流、貴様はそれでいいか?」
「…えぇ、私は誰でも」
「よかった。じゃあ着物を変えたら早速行こう!」
家康はそう言って、にこっ、と笑った。
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