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貴方も私も人じゃない87

「なんなんだアイツ」
「なんなんだは、お、ま、え、だよ忠次!!鎮流殿になんて失礼なことを言うんだ!」
がーっ、と吠えた家康に忠次は仰天したように家康を振り返る。そうした反応があるとは思わなかったようだ。
「だってそうだろうが!アイツ俺に、行動如何によってはお前に迷惑が及ぶことをお忘れ無く、なんて言いやがったぞ!嫌みな奴だぜ」
「ううん…鎮流殿の言葉はあながち間違いじゃないんだよ忠次…」
「なんでだよ?そもそも、大阪を発つ時にあんな見習いはいなかったじゃないか」
「当然だ、彼女はワシが連れてきた人だ。でも彼女は今、半兵衛殿の弟子なんだよ」
「はっ?!」


「先程の言い様、中々面白かったぞ」
「左様でございますか?」
一方、鎮流と陣を出て物資を管理している陣へ鎮流を連れてきた三成は、陣の入り口のところでそう口を開いた。鎮流はいたずらっぽく笑いながらそう聞き返す。
三成は薄く笑いながらも、ふん、と鼻をならした。
「半兵衛様から認められたような貴様があのような三流な言葉を言うとは思えん。家康が奴の対応に困っていたから、わざとあのような煽りを言っただろう?」
「…ふふ、そうとも言えなくもないです」
「ふん。掴めない奴め」
「誉め言葉としていただいておきますわ」
「…それで、大阪はどうだった?」
「え?」
物資を検めていた鎮流は、三成の言葉に驚いたように三成を振り返った。三成は仏頂面で鎮流を見ていた。
「秀吉様のことだ!秀吉様にお変わりは無かったか」
「…以前を知らぬ私には判断いたしかねますが、半兵衛様は何も」
「そうか」
「…それにしましても…豊臣秀吉様。あの方は、本当に大きなお方です」
「何?」
三成は鎮流の言葉の真意を図りかねたか、僅かに眉間を寄せた。鎮流は手にしていた手帳から顔をあげ、空を仰いだ。
「何も仰らずともこちらが震えるほどの威圧感、存在感…。そして何よりも、あの方が仰る言葉は全て真実なのだろうと思わせる雰囲気、いや力をお持ちでございます。三成様が信奉なさるのが理解できるほどでございました」
「!ふん、当然だ。この国の未来を切り拓くのは秀吉様をおいて他にはいない!」
「…、秀吉様は、期待していると、私に仰ってくださいました」
「何…ッ」
三成の言葉にそちらをみれば、その顔にはほんのり、羨ましい、と書いてあるように見えた。鎮流は小さく嬉しそうな笑みを浮かべる。
「…半兵衛様にも時折言っていただけた言葉ではありましたが…あの方のお言葉ほど、すとんと胸に落ち、こんなにも嬉しかったことはございませんでした…。あぁ、この方は本当に私なんぞに期待してくださっているのだと…」
「……、貴様の抱く感情には概ね同意するが、期待されるのがそうも嬉しいのか?」
「…私めは女ですし、男の兄様たちに比べれば、そう期待を向けられるほどの関心は抱いていただけませんでしたので」
「…優秀な女は苦労をするな?」
「ふふ、さもありなん…女は多少馬鹿の方が、生きやすいかもしれませんね、あはは」
にやっ、とした笑みを浮かべて三成が告げた言葉に、鎮流も笑って返した。三成はそんな鎮流に柔らかく笑いながらも、おどけたように肩を竦めた。
「…酒井のことは気にするな。あれは大した男じゃない、相手にする価値もない」
「まぁ、はっきり仰いますのね、三成様」
「ふん、事実だからな」
「ふふふ、ではあの方に非難されようと聞き流すことにいたしましょう。…と、ありがとうございました三成様、物資の確認すみましてございます」
話しながらもちょうど終わった確認にそう声をかければ、三成は小さく頷いて陣幕にもたれ掛かるように立っていた体を起こした。
「そうか。次は何をすればいい」
「もう夜になります。斥候をおいて、後は休むように兵にお伝えいただけますか?」
「承知した」
三成は秀吉が鎮流に期待している、と声をかけたという話からも鎮流の事を一目おいたようだ、先程に比べるとどこか従順な口振りで鎮流の言葉を聞き、陣を出ていった。
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