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Not revolved transmigration 24

「…承知、いたした!」
真田は何とかそう言うと職員室を出た。
「………ッ!」
職員室を出るなり真田は走った。一度も立ち止まらずに走り続け、自分のホームルームの教室に入ると、ドアを閉じてその場に座り込んだ。
――これを見ていると、妙な懐かしさを感じるんだ
石田の言葉に嬉しさが沸き上がってくるのを感じた。
「…はは、はっ」
石田は覚えていない。覚えていないのに、豊臣と会った時に何かを感じたように、自分が手向けた六文銭を見て懐かしさを感じてくれた。

それは、自分が石田の中でそれだけの存在になっていたということ。

真田は顔を伏せた。
石田の魂は無くなったものだと思っていた。だが、完全に消え去った訳ではないようだ。
魂が残っているということは、もしかしたら、いつか記憶を取り戻すのかもしれない。そうなった時、石田がどれだけ絶望するだろうか、考えずとも分かる。
それでも真田は、彼の中に己が残っていた事を、嬉しいと思ってしまうのだ。
「…ッ」
真田は1つ見つけた幸せに、口元に笑みを浮かべると立ち上がり、再び走って家へと向かった。




 それから数日後、漸く伊達が登校してきた。
「Good morning」
「政宗!」
その容姿に徳川と真田は目を真ん丸に見開いた。
「政宗殿!…い、如何なされた?その頬は…」
「『やはり腹が立つ』とか言って、大谷サンに殴られた」
伊達はそう言いながら、頬に貼られた大きな湿布を上から抑えた。周りの女子は不安そうに伊達を見ていたが伊達は全く気にしなかった。
「…まぁ、確かに俺が悪かったワケだがよ…」
「その湿布…そ、そんなに酷いのか?」
「あの人、理由は知らないけど喧嘩巧ぇからよ」
「あぁ、確かに」
「歯が折れたりはしてねぇけど、見事に腫れた」
「腫れた?」
ことり、と首を傾げた真田に伊達は気まずそうに湿布を叩いた。
「『不様な姿を曝して己の愚かさを思い知りやれ』…だとさ。ぶっちゃけ、昨日には行っていいって言われたんだが…あまりに酷い腫れだったもんだから…さ、流石に恥ずかしくてよ…確かに思い知ったわ…」
「は、はは…。…でも、本当に心配したぞ。もうあんな無茶するなよ?」
徳川の言葉に伊達は肩を竦め、苦々しく笑った。
「…秀吉さんが、力貸してくれる事になった」
「豊臣殿が…?」
「一通り怒られた後、探してやる、って。……だからもっと話してくれ、ってさ」
「…そうなのか…」
伊達はわしゃわしゃと頭をかき回した。その手を途中で止め、眼帯の上に手を添えた。
「…あの人は優しすぎて…慣れねぇよ」
「優しすぎ?」
「この目を見ても何も言わなかったし…深くは入ってこないでくれる。俺には勿体ねぇ」
「勿体ないだなんて…」
「…ま…大谷さんにも怒られたし…あの人の事を考えてみようとは、思ってる」
伊達はそう言ってリュックを机に置いた。徳川と真田は顔を見合わせる。
「そんな事より、俺が休んでた範囲教えてくれ」
「おぉ、いいぞ!」
「…、政宗殿」
「あん?」
「大丈夫で…ござるか?」
真田の問いに伊達は少し驚いたように真田を見、そして苦笑した。
「…、あぁ。大丈夫だ」
「……そうでござるか」
「幸村。後で話したいことがある、付き合ってくれ」
「…?分かり申した。それでは、某は生物故失礼いたす」
真田は伊達の言葉に首を傾げながらも、教室移動のため教室を出た。
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