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貴方も私も人じゃない45

「…ふふっ。怖いかい?」
「っ、………」
「怖いならば、まだ君もその程度だということだね。何を恐れることがあるんだい?強くなれば生きられる、それだけのことだろう?」
「…それは…そうで、ございますが」
「が?」
半兵衛は楽しそうに先を促す。鎮流はわずかに眉間を寄せた。
「…意地の悪いことを仰います」
「だってそうだろう?強くなろうとしない者なんて秀吉の世界には必要ないんだ」
「…」
「…っと、君の誤解のないように一応伝えておこうか。僕が言いたいのは、向上心のない人間なんていらないってことだよ」
「!」
鎮流は半兵衛が付け足すように言った言葉にはっとしたように半兵衛を見た。半兵衛はそんな鎮流の反応に、くすくすと楽しそうに笑う。
鎮流は半兵衛の本意に気が付かなかったことに恥ずかしさを感じ、かぁ、と僅かに頬を赤らめた。
「…も、申し訳ありません……」
「ははっ、構わないよ。何でもかんでも分かる訳じゃあないんだもんね」
「………もしかして、こういう言い方は失礼ではあるのですが、石田様があれだけの地位にいるのは…」
「うん?三成君かい?三成君は他の誰よりも秀吉に忠誠を誓っているし、それを誰よりも示してくれている。そして何より、秀吉の為にと鍛練を惜しまない」
「………」
「確かに三成君はあまり人間的にはいい人とは言えないかもね。でも、どれだけ三成君より人間が良くても、口先ばかりの子や鍛練を怠るような人間では三成君の足元にも及ばないさ」
「……成程」
半兵衛はぱん、と手を叩いた。この話は終わりだ、そう言わんばかりに。
「さて、鎮流君。あの戦はもう終わりも当然だ、ところで君に渡す物がある」
「はい。なんでございましょう」
半兵衛の手を叩く音が合図だったのか、少し大きめの箱を持った兵士が陣に入ってきて、箱を半兵衛に手渡すと早々に出ていった。半兵衛はその箱をそのまま鎮流に差し出す。
「はい」
「…?頂戴いたします」
鎮流は両手でそれを受け取ると、静かに箱を開けた。

箱の中には下の方に洋服のようなもの、そのうえに置かれた紺地のホルダー、そして。
シンプルだが銀で装飾された、黒い拳銃が二丁、入っていた。

鎮流は驚いたようにそれを見たあと、納得する節があったか、何度か小さく頷いた。
「…私の装備、でございましょうか」
「そう。君が袴とか履きなれてるか分からなかったから、一応衣装の方は今の君が着ているものに似せてみたよ。少しの間この陣から僕は出ているから、装備してみてくれるかい?」
「承知いたしました。ありがたく頂戴いたします」
鎮流はそう言うと机の上に箱を置き、着替えるべく中の衣装を取り出した。
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