スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

貴方も私も人じゃない30

「…鎮流といったな。貴様も易々とこんな場所に来るな」
「申し訳ありません、以後自重いたします」
「あぁ、彼女はワシを探しに来ただけで…」
「言い訳はいい。用が済んだならばさっさと出ていけ。女がこんな場所にいるな」
三成はそう言い捨てるように言うとその広間から出ていった。鎮流はく、と膝を折って礼をして三成を送った。家康はやれやれと肩をすくめた。
「全くあいつは手厳しいな。じゃあ、場所を移そうか、鎮流殿」
「御手数お掛けします…」
「…、とりあえず!行こう!じゃあまた明日な、皆!」
家康はがし、と鎮流の手を掴んで広間から出た。鎮流は手を掴まれたことに驚いたように家康を見たが、大人しく家康について行った。

 家康は広間になっていた陣の外に出、少し離れた川縁にやってきた。以前、鎮流と家康が話した川の、少し上流部だろう。
家康はふぅ、と息をつくと露出している腕をさすった。
「…、やはり夜になるとまだまだ冷えるな。寒くはないか?」
「ええ、大丈夫です。元より寒さには強い方なので」
「そうなのか。北の方の出なのか?」
「母方の家は、確かに北でございます」
「…、なぁ鎮流殿…」
「貴方様がまだ反対なさっていることは聞き及んでおります」
鎮流が家康の戸惑いがちな言葉にすぐに返した言葉に、家康は驚いたように鎮流を振り返った。鎮流は、じ、と家康を見つめる。
「このままなぁなぁで済ますのはお互いよろしくないかと。…今一度、理由を、お聞かせ願えますでしょうか」
「……戦場は危険だ」
「重々承知しております、しかしこうする以外に生き抜く道がありません」
「ならワシが!」
「お言葉は嬉しく思いますが、赤の他人の貴方様におすがりするわけにはいきません」
家康は鎮流の言葉にどこか悲しげに、そして不可解げに眉間を寄せた。
「どうしてそう一人で立とうとするんだ!君は女の子じゃないか」
「女は自らの力ではなく、ただ男にすがって生きろと?」
「そうじゃない!どうしようもないならそうしなければならないかもしれない、だが君にはワシがいるだろう?」
「…?貴方様にお情けを戴けるほどの仲ではないかと」
「あぁもう!そうじゃないんだ!君は頭がいいんだか悪いんだか…いやワシの言葉が悪いのか…」
家康は目元を手のひらで多い、困ったように空を仰いだ。鎮流は小さくため息をつく。
「…貴方様にお救いいただく義理はございません」
「……、どうしてだ?何故それがダメなんた」
「駄目とか駄目でないとかの問題ではありません。敢えていうならば、それが嫌だからでしょうか」
「いや?」
「私は早く、養われるだけの人間から抜け出したいのでございます。一人で、立ちたいのでございます」
「…どうしてだ?」
「そうすることで、私は子どもではなく一人の人間になれる…そう、思うからです」
家康は、よく分からない、とでも言いたげな顔で首をかしげた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2014年06月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30