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貴方も私も人じゃない37

「…それをお聞きになりますか」
「何を答えようと構わないさ。この世界を希望に溢れているという、その君の価値観が知りたい。否定してくれても構わないよ」
「……」
半兵衛はそう言って手を離した。
鎮流は僅かに考えこむ。

豊臣は家康の態度や戦略を見る限り、どちらかというと独裁的な色が強く、かつそれは武力をもっての統治であると見受けられた。一般受けは悪いほうであると言えよう。だが世情は戦乱、社会も未発達な状態、そうしたことを踏まえると民主主義のようなものが成り立つ世界とも考え難い。

さて、どう答えるべきか。
鎮流はそれから少し考えたあと、ふ、と口を開いた。
「…私はまだ、主たる豊臣秀吉様がどのようなお方か存じ上げませんので、今の判断は早計すぎるかと」
「…ふぅん?」
「豊臣軍はどちらかというと独裁的な姿勢のように感じられました、ですので、善し悪しはその頂点たるお方に左右されますので」
「ふふ、君は意外とのらりくらりと避けるのが上手だね?」
半兵衛は答えをはぐらかせた鎮流に怒るでもなく、愉快そうにそう言った。鎮流は申し訳なさげに眉尻を落とす。
「私の家系は言質を取られることが一番厄介でしたので、つい…」
「構わないさ、こちらでも揚げ足をとる人間は多いからね。それに、君の言うことにも一理ある。今秀吉は大阪だから、この戦が終わったら会わせてあげよう」
「ありがとうございます」
「あ、じゃあ今はどう思ってるんだい?参考までに聞かせてよ、君の最終判断ではないと承知してるから」
「…、他人受けはあまりよろしくない軍ではないかと。ですが、私は嫌いではないです」
「ふふ、それはよかった」
半兵衛の策による戦運びに問題が起こることもなく、二人はその日の戦闘の間ずっとそんな風に話していた。誰かが危機を知らせることもなく、戦は豊臣方に有利に、筋道通りに進んでいった。



 その夜。日がくれ、家康や三成も一時的に撤退してきていた。そして、半兵衛に用をいいつかった鎮流が二人のもとを訪れていた。
「失礼します、家康様石田様」
「!!鎮流殿!」
「貴様か…何のようだ」
「半兵衛様より、明日の作戦を伝えるようにといいつかって参りました」
嬉しそうな家康と鬱陶しそうな三成の正反対な反応に鎮流は半ば苦笑しながらも、半兵衛の伝言を伝えた。三成はそれを聞き終わると、承知した、とのみ呟いてどこかへ行ってしまった。
「…」
「三成は多分、刑部に伝えに行ったんだろう。気にすることはないさ」
「!左様でございますか…。…、家康様、お怪我などは」
「ん?あぁ、大丈夫だ!ありがとう」
家康は何が嬉しいのか、ずっとにこにこと笑顔を浮かべていた。
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