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貴方も私も人じゃない29

その日の夕方。
一日目を終えた鎮流は、半兵衛と翌日の打ち合わせをした後に家康を探しに兵たちの集まっている広間に来た。兵たちの方も突然現れた鎮流を意外そうに見ている。
キョロキョロと周りを見渡すと、家康はすぐに見つかった。家康の方も驚いたように鎮流を見た。
「鎮流殿!こんなところに来るなんて、なんだか意外だな」
「あぁ、家康様。お探ししておりました」
「ん?ワシに何か用か?」
「特別用があるわけではございませんが…少し、お話にお付き合いいただいてもよろしいでしょうか?」
「えっ?!」
家康は鎮流の言葉にあからさまに驚いたように鎮流を見た。鎮流はそうも驚かれると思っていなかったようで、きょとんとしたように家康を見た。
「…ご迷惑でしたか?でしたらまた日を改めてお伺いします」
「え、ああいや!そんなことはない!うん!あー…場所を移そうか?」
「私はどこでも構いませんが…」
「おい、なんだお前」
家康とそう話していると、不意に鎮流の腕を無作法にがしりと掴んできた男がいた。二人は僅かに驚いたようにその男を振り返る。
男はうさんくさそうに鎮流を見ており、鎮流はその男に向き直った。
「あぁ、彼女は半兵衛殿の弟子になった子だ」
「半兵衛様の…?!」
「鎮流と申します、以後お見知りおきを」
家康の言葉と、鎮流のその自己紹介に男は交互に二人を見たが、はっ、と小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「冗談が過ぎますぜ徳川殿…半兵衛様がこんな女弟子にするわけないでしょうが!」
男の言葉に周りの何人かの兵から笑い声が上がった。家康は戸惑ったように、だがどこか不愉快そうに顔をしかめた。
鎮流は表情を変えなかったがその馬鹿にしたような男の声色に、自分を掴む男の腕を掴んで転ばせてやろうかと自分の手首をさりげなく回した。だが、鎮流が何かする前に男は鎮流の腕を離した。
無理もない、首筋に刀を突きつけられたのだから。
鎮流は驚いたように刀を突きつけている三成を見た。三成はつまらなそうに突然刀を突きつけられて怯えている男を見ていた。
「石田様、」
「三成!」
「…その者は確かに半兵衛様がお認めになられた者だ、無礼を働くならば斬滅する」
「も、申し訳ありません!失礼いたしました!」
「あ、はい…(ざ、ざんめつ……?)」
「…なんだか意外だな、三成!まさかお前が彼女を守りに来るとは思わなかったぞ」
男は三成の言葉に大慌てで鎮流に頭をさげ、他の笑っていた者たちもこそこそと部屋から出ていった。家康は一応は丸く収まったことにほっと息をつきながら、にこにことそう三成に話しかけた。
かちん、と三成は刀を鞘に納めながら、ふん、と小さく鼻を鳴らし、ちらりと鎮流を見た。
「…半兵衛様より命ぜられているだけだ」
「それは…お手数をお掛けしました」
「構わない。貴様に手を出したらどうなるか、先に見せつけておいた方が後々楽というものだ」
三成は無愛想にそう言ったが、家康はにこにこと笑っていた。
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