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貴方も私も人じゃない31

ふふ、と鎮流は小さく笑った。
「貴方様にはお分かりいただけないかと思いますが」
「…君は十分大人びていると思うぞ」
「大人を気取った子供なんていくらでもいます。私も、結局養われていてはそうした子供と同じ…早く一人前になりたい、と言えばよろしいでしょうか?」
「一人前、か…。そういえば、君歳は…」
「今年で18になります」
「…18?!え、じゃあワシとそんなに変わらないじゃないか」
「!あ、そんなにお若いのですか」
「あ、もっと老けて見えるか?」
「20の後半かと思っておりました」
二人は互いにきょとんとお互いを見合い、くすくすと笑った。
ひとしきり笑ったあと、家康は困ったように笑んだ。
「…、君の気持ちは、分からなくもないよ。そう思っていた時期が…多分ワシにもあった」
「!」
「いくらあなたが決めたこととはいえ、ワシがあのとき誘わなければ…そう思ってしまうんだ」
「……、私は、感謝しておりますよ。竹中様は、とても素敵なお方です」
「そう、か。…こういう言い方は誤解を招くかもしれないんだが…その……」
半兵衛を素敵だ、と言った鎮流に家康は曖昧に笑い、視線を腰の辺りで組んだ自分の手に落とした。そして言いづらそうに言葉を紡ごうとして、どもっている。
鎮流はそんな家康に目を細めた。ちらり、とやってきた方向を振り返って人がいないことを確認すると、鎮流はぐっ、と家康に近づいた。
「………家康様」
「う、わっ?!」
鎮流は家康の手を掴み、顔を家康の顔に近づけた。家康は急に接近した鎮流に仰天したように顔をのけぞった。鎮流は人差し指を自分の唇につけ、し、と静かにするように促す。
「…薄々感じておりましたが、やはり貴方、豊臣の純粋の家来ではありませんね?」
「…!どう、して…」
「貴方はどこか、豊臣を恐れている。だから私が豊臣の配下になることに不安を覚えるのでしょう?」
「………参ったな、ばれてしまったか」
家康は驚いたように鎮流の言葉を聞いていたが、すぐにふっ、と困ったようなそうでもないような、微妙な笑みを浮かべた。
家康はのけぞっていた体勢を戻し、鎮流の頭に手をのせた。
「…元々ワシは秀吉公と敵対していたんだ。比較的最近まで、な。小牧長久手の戦いで、これ以上部下に血を流させたくなかった、それに秀吉公の進む先を見てみたかった、だから投降した。…秀吉公が怖くないと言えば、それは嘘になる」
「(小牧長久手…確か、家康と信長の息子だったかが一緒に組んで豊臣と戦った戦……)」
「…、そんなに分かりやすかったか?」
家康は困ったように笑いながら、考え込んでいるように見える鎮流にそう問いかけた。
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