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貴方も私も人じゃない40

「………まぁ、そうですね」
「確かに理解は得難いなぁ」
「…その絆の力とやらで、どう統治をお進めになるおつもりなのですか?」
「ん?」
家康は鎮流の問いに首をかしげた。鎮流はやれやれ、といったように額に掌を当てた。
家康は家康で、どこか呆れた様子の鎮流にきょとんと首をかしげている。鎮流はぱっ、と手を降り下ろすように開いた。
「…家康様の仰るその絆の力は、物理的な力ではないでしょう?」
「ぶつ…あぁ、そうだな」
「この戦乱で、どうやって直接的な力ではない力で勝ち進むおつもりなのかと」
「勝ち進む?」
「この時代は群雄割拠、力なき者は滅ぶ時代。基本的に武力でやりあっていく中で、どうするのかとお尋ねしています」
家康はきょとんとしていた表情を驚いたようなそれに変え、ぱちぱちと何度か瞬きした後困ったように笑った。
「…拳の力、だな」
「……」
「絆の力を信じている、それは本当だ。だけど、戦わなければならないときは全力で戦うさ」
「…貴方様にとって、この戦は戦わなければならない戦ではないのですか」
「…、それは…」
家康は鎮流の言葉に口を閉ざした。鎮流は僅かに眉間を寄せ、どこかもやもやしているような表情で言葉を続ける。
「戦わなければならない戦ならば、全力でお臨みになるのでございましょう?ならば、情け容赦をかけるのは矛盾するかと思うのですが」
「……そうかもしれないな。でも、相手を殲滅するというのもどうかと思うんだ。敵をすべて滅ぼしてしまっていたら、何も残らない」
「…、それはそうですが」
「半兵衛殿は殲滅するつもりなんだ。…それがワシは、少し、な…」
「…それはないかと思います」
「え?」
家康は鎮流の言葉に意外そうに鎮流の顔を見上げた。鎮流はごそごそとポケットをあさり、手帳を取り出す。そして家康の隣に陣取ると、地図を写したページを見せた。
「これが竹中様の策の全貌です」
「……?あぁ……」
「ここ」
鎮流は敵城の裏手を指さした。そこは川があった。
「この川は竹中様の防衛ライ……防衛線には含まれていません。この川が気になったので爺やにどのような川なのか、見に行かせました」
「あ、だからいなくなっていたのか」
「えぇ。そうしたら、この川は随分深いことが分かりました。ですがまぁ、鎧などの装備を捨てれば、あるいは泳いで逃げられます」
「…逃げ道、ということか?」
「ええ。ですが今申し上げたとおりこの川は深く、また川幅が広い。細くなる場所に行くには別動隊がいる方へ来なければなりません。ですから、ここから逃げるには着の身着のまま、全て捨てていかなければなりません」
「………なるほど、そこまでして逃げたなら、脅威にはならない…」
家康は感心したように呟いた。鎮流は家康の言葉に頷く。
「逃げ道を用意しておけば、不利になった時に下っ端は簡単に逃げていく。完全に固めてしまうより敵兵力を削ぐには有効的な手段です。竹中様が果たして家康様の思うような思いで逃げ道を用意したとは…正直あまり思えませんが、策から見ても竹中様の言動から見ても、殲滅するつもりはないのでは、と」
「……なぁ、鎮流殿。あなたの話は面白いし的を射てる、目から鱗だったよ。…あなたの目には、半兵衛殿はどう映るんだ?」
「竹中様ですか?」
鎮流は不意に家康が尋ねてきた内容に驚いたように家康を振り返った。
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