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貴方も私も人じゃない42

三成は出ていった鎮流を目で追った後、ふん、と小さく鼻を鳴らした。
「…貴様、私が去ってからずっとか」
「ん?あぁ、まぁな」
「…、貴様はあの女が平気なのか」
「?どういう事だ」
三成の漏らした言葉に家康は僅かに眉間を寄せ、腰を上げた。三成はしばらく鎮流が消えた方向を見つめた後、家康を振り返った。
「…私にはあの女が不気味に見える」
「不気味……?何がだ」
「あの女は本心を何も語らない。客観的な事実しか述べん、それが気味が悪い」
「客観的な…?そんなことはないぞ。むしろ、彼女は自分の意見には主観が交じるからと言い控えるような人だぞ」
「……、私にはそうは思えない。刑部に対する言動もそうだ。…貴様は普通だからな」
「ちょっと待て!彼女がそんな差別をする人間だっていうのか?」
家康は表情を険しくさせ、三成に掴みかかった。三成は家康を睨むように見据え、ばし、と家康の手を振り払った。
「ならば差別しない者だと言えるのか?その確証はどこにある?」
「…半兵衛殿がそんな人間を見込むと思うのか?」
「貴様…半兵衛様の名を気安く語るな!」
「なら三成、お前も彼女への言葉を撤回しろ!」
「……ふん、随分とあの女を気に入っているようだな、家康」
ばちり、と二人の視線の間に火花が飛んだ。三成は家康の言葉に目を細め、不愉快そうな不思議そうなそんな顔色でそう問うた。家康はわずかに驚いたような表情を浮かべた後、曖昧な笑みを浮かべる。
「…そんなことはないさ。お前こそ何故そう毛嫌いする」
「信用できないからだ。適当な言葉で飾り立て、本心を隠し笑みを張り付ける…不愉快だ」
「三成、お前…!」
「…半兵衛様のご判断に間違いはない。だから軍師としての奴の判断には従う。だが人間としての奴は信用ならない。……今の段階ではな」
「…………」
「家康。貴様も早々に信用するのはやめろ。女は男以上に信用ならない」
「!三成それは」
「ではな。明日の戦で終わらせる、気を締めろ」
三成はそういい捨てるようにそう言うと、家康の返事も待たずに出ていってしまった。家康は追おうかとも思ったが、夜もふけてきたのは事実、明日の為にも休むことを選んだ。
陣を出て自身の陣に向かいながら家康は拳を握り締めた。
「…三成は彼女を誤解している。どうするべきか……」
家康は、はぁ、と小さくため息をついた。


三成は家康が陣から出たのを遠目に見ていた。
「…何故家康は奴をああまで気に入る。不可解だ」
三成はぼそりとそう呟き、踵を返した。
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