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貴方も私も人じゃない41

「あなたに言われなければこの抜け穴には気が付かなかった。…もしかしたらワシは半兵衛殿を誤解している所があるのかもしれない。だから、あなたの目にどう見えているのかを聞いてみたいんだ」
家康はそう言って、にこ、と笑った。鎮流はパチパチとなんどか瞬きを繰り返した。
「…、それは私に聞くより竹中様を観察なさった方がよろしいのでは?どうしても他人の評価にはその者の主観が入りますので…」
「観察?ううん…そうかもしれないが…あ、そういえばあなたは前に半兵衛殿を素敵だと言っていたよな?」
「えぇ。とはいえ、私にとっては、ですが。私は実力主義が好みなので…」
「実力…主義?」
「実力があれば、性別や出自に関わらず力を得ることができる…と、でも言いましょうか。……性差が最も疎ましいものでしたので」
「なるほどな。ははっ、確かに半兵衛殿は、実力がある者なら誰でも勧誘してくるからなぁ」
家康は鎮流の言葉にからからと笑った。鎮流も家康の言葉にどこか楽しそうに笑い、出していた手帳をしまった。
「実力主義、かぁ。実力無きものは滅べと言われているようで、ワシは少し苦手なんだけどな、はは……」
「うーん…確かに、そうかもしれませんが、所詮この世は弱肉強食」
「!!」
「…、と言うのは乱暴ですが、差別なき世はありませんから……」
「ない、か。本当にないんだろうか」
家康は鎮流の言葉に目を細め、よいしょ、とその場に座って鎮流にも座るように促した。
鎮流は促されるまま家康の隣に座った。
「…人は、劣等感を消せないものですよ」
「劣等…感?」
「貴方様は、お持ちではありませんか?」
「うーん、あんまり感じた事はないな…あなたはどうだ?」
「私ですか?そうですね…ふふ、よくありました」
「本当か?あなたはそうしたものには無縁そうに見えたよ」
「いえ、私は無い物ねだりをする方ですよ。それも一つの劣等感です」
「へぇ……そうか、なるほどな。じゃあワシと一緒だな!」
「そうなのですか?」
「あぁ、ワシも無い物ねだりする方なんだ。じゃあ、ワシにも劣等感があるってことだな」
家康はそう言うときょとんとしたように鎮流を見、困ったように笑った。鎮流も家康の言葉に苦笑を浮かべる。


二人はしばらく、そんな風にあれやこれやと話し合っていた。ばさり、と陣幕をあげて入ってきた三成は、話している二人に眉間を寄せた。
「家康、貴様ら何をしている」
「ん?あぁ、三成か!いやぁちょっと話し込んでてな」
「石田様」
「貴様が話し込むのは勝手だが、明日の戦に支障をきたすならば許さんぞ。貴様もだ鎮流」
「申し訳ありません、失礼いたしました。では家康様、そろそろお暇させていただきます」
「うん、そうだな。また明日、こう話してもいいかな?」
「…、互いに時間がありましたら」
鎮流はそう言うと二人に礼をし、陣から出ていった。
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