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貴方も私も人じゃない28

「…いや……あの方は、私そのものには興味がないのだろうと思っていましたので、心配などされても、と」
「どうしてそう思ったんだい?」
「あの方はどなたにもニコニコと笑っていらっしゃいます。誰かが失態を犯しても、陰口を叩かれても…。要するにあの方は誰のことも、特別好いたり嫌ったりしていらっしゃらないのでしょう」
「つまり、誰にも興味がない、と?」
「…おそらくそう申し上げたとしても否定なさると思われますが」
「ふふふ、君の言うことには一理あるね」
「…と、申されますと」
一理ある、という半兵衛の言葉にはどこか楽しげな雰囲気が入っていて、何かを含んでいるその言いぶりに鎮流は聞き返した。
半兵衛は持っていた書簡を、ぱたり、と閉じた。
「君の言うことは、あらかた的を射ているがどれも一般論なんだ」
「…つまり、個人差に対応できていない、という事ですか」
「そう。それにしても、つくづく君は物分かりがいいね」
半兵衛が言わんとした事を一発で見抜いた鎮流に、半兵衛は感心したように鎮流を振り返り、楽しそうに笑った。鎮流は僅かに照れたように視線をそらした。
「…お褒めの言葉ありがとうございます。しかし、そう仰られるということは、家康様はそのような人間ではないと、いうことでしょうか」
「彼はそこまでつまらない人間ではないよ。世の中には例外もいる。彼はお人好しな所があるしね。彼は純粋に君を心配しているんだと思うよ」
「………そう、ですか………」
どこか納得していないような鎮流に半兵衛はふふ、とちいさく笑い、鎮流の前に歩み寄った。
ぽふ、と半兵衛は両手で鎮流の頬を挟み、鎮流と目を合わせるように鎮流の顔を僅かに上にあげた。至近距離のため鎮流は一瞬戸惑ったように身動ぎしたが、目をそらすことはなかった。
「君は僕が思っていたよりも優秀なようだ、ただ、先入観や君の価値観が少し強すぎるようだね。戦では例外を予知できないと負ける」
「…はい、申し訳ありません」
「謝ることはないさ、君はよく回りの人間を観察できている。その力だけでも十分なものさ。あとはもう少し柔軟に、かつさまざまな可能性を想像するだけだ、出来るかな?」
「…努力します!」
「うん、いい子だ」
力強く返事をした鎮流に半兵衛は満足げに笑い、よしよしと頭を撫でた。
「…さて、それじゃあもう少し手伝ってね。その後は、手始めに家康君にでも会いに行くかい?」
「…はい、そういたします」
「そうだね。じゃあ、今日は部隊の編成を君に教えよう、軍の編成は早めに頭にいれてくれたまえ」
「はい!」
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