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貴方も私も人じゃない43

「…………お嬢様」
三成が去って少しして、そんな声がした。がさ、と音がして、近くの木陰から、立ち聞きしていたらしい、鎮流と源三が姿を見せた。
源三はちらり、と鎮流を振り返った。鎮流はゆったりと腕を組み、ふふん、と小さく笑う。どこかその表情は楽しそうだ。
「…あの人、疎そうに見えて案外鋭いじゃない。彼、大将には全くもって向かないけれど部下にいるととても重宝するタイプだわ」
「…と、おっしゃいますと」
「客観的な事実しか述べていない、それはある意味当たりということよ。…下手に自分の感想を述べるより無難だし、間違いは言っていない、私の常套。まさか、竹中半兵衛ではなく、彼に見抜かれるとは思っていなかったけれど」
「………恐らく過去に、相当の被害を受けたものかと」
「そうね。いわれのない差別を受けた人間ほど、自分でも気がつかないうちに他人に敏感になっていく…このご時世じゃ鬼の類と思われても仕方のない外見ですものね、彼」
鎮流は組んでいた腕をとき、たん、と軽やかに乗っていた木の根から降りた。源三は歩き出した鎮流の数歩後ろを歩く。
「…どうするおつもりでございますか」
「どうする?どうもしないわ、どうする権利も私にはないもの。ただ…警戒する対象が増えた、ただそれだけの話よ」
鎮流はただ静かにそう言ってのけた。源三は鎮流の言葉に眉間を寄せた。
「…、鎮流お嬢様、恐れながら」
「なぁに?」
「お嬢様、お嬢様のそうした態度は……」
「別にバレようがどうでもいいわ。それを忌避するか否か…そのあたりも別にどうでもいい事なのよ。その程度は障害にならない」
「そうとは言えませぬ、」
「それは先人の知恵と言いたいのかしら?貴方から見た私がそうだと」
「!!い、いえそういうわけではっ…」
源三は楽しそうにそう言って振り返った鎮流に、びくりと肩をはねさせ慌てたように否定した。鎮流はそんな源三に何かを含んだような笑みを浮かべ、視線を前に戻した。
ふふっ、と小さく笑い声をあげて肩を震わせた。
「ま、一般的に嫌われやすいことは重々承知よ。だけど、豊臣ではそれが障害にはならない。別にそれを言い訳にしているわけではないけど、お人好しは必要ないでしょう?」
「……お嬢様は、それでよろしいのですか」
「私はもともとお人好しではないわ。私に害をなすもの、私の道を邪魔するもの、それがなんであろうと私は全力を持ってこれを排除する。…それが私のポリシーよ。貴方が一番、それは身を持って知っているかと思っていたわ」
「……、否定はしません」
源三はそう言うと目を細め、小さく頭を下げた。鎮流は源三の言葉にまた小さく笑い声をあげた。
そしてーーー不意に笑顔を消し、冷めた目で源三を静かに見据えたのだった。
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