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貴方も私も人じゃない25

それじゃあ、よろしく頼むよ。
半兵衛はそう言い、にっこりと笑った。



 それから少しして、軍議が始まった。部隊長などか勢揃いし、少し狭い陣はぎゅうぎゅうになっていた。
鎮流は陣の入り口の側に立って控えており、半兵衛主動で進む軍議を渡された地図をみながら傍聴していた。
「……だから、この森を君たちの隊は外側を回るように進んでくれたまえ。三成君家康君、君たちは先鋒だ。次を落とせば近江は僕たちの手に落ちる、くれぐれも気を抜かないようにね」
「承知いたしました」
「了解だ」
「……(流石、巨大な軍なだけはある。どんな策も自由自在…もはや楽しそうにすら見えるわ)」
「……よし、以上だ。何か質問は」
「あい、一つよろしいか」
「なんだい?」
「あそこにおわす女子は?見かけぬ顔であるが」
半兵衛の策をあまり使いなれていない筆で地図に記録していた鎮流は、そう半兵衛に尋ねる男の声に顔をあげた。
そして驚愕と動揺で目を見開いた。
「…!?」
「あぁ、彼女は僕の弟子みたいな子だよ。ついでに紹介しておこう、鎮流君だ。くれぐれも手を出したりしないようにね?」
「ヒヒッ、女子が弟子とは…理由をお聞かせ願えますかな?」
「それは彼女に才があると見たからさ。それだけ……どうしたの、鎮流君」
「………え、あっ、は、」
「ヒッヒ、女子にはちとキツかったかァ?」
「刑部、」
半兵衛に名前を呼ばれて鎮流は我に帰った。鎮流の反応にその男はひきつった笑い声をあげ、それを諌めるように三成が声をあげた。
男は輿のような物に座禅を組むような形で座しており、「浮いて」いた。誰か担ぎ手がいるわけでもなく、輿についた紐や縄がふらふらと揺れ、浮いていた。それだけではない、男は鎧や下履以外から覗く肌全てを包帯でおおっており、顔も見ることが出来ない。唯一覗く目は白黒反転しており、白い瞳がじろりと鎮流を見つめていた。

一言で言えば不気味。
流石の鎮流も、彼の容姿には度肝を抜かれてしまった。

鎮流は慌てて頭を下げた。
「申し訳ありません、今まで…その、う、浮いている方に拝謁したことがなかったもので…」
「あっはっは。浮いている方だってよ、大谷君」
「ヒヒヒッ」
「(…大谷…大谷…?。……大谷吉継か!!なんか歴史の先生が熱弁してた…なんだっけ…)」
「まぁ君をみて驚かない方が驚きだけどね。他に質問は。………なさそうだね、じゃあ今日はこれで解散、各自準備に当たってくれたまえ」
半兵衛の言葉で軍議は終わりを迎え、他の将たちはチラチラと鎮流を見ながら陣から出ていった。鎮流はそれを礼をして送った。
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