スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

貴方も私も人じゃない27

「……、家康様、こういった言い方は無粋な言い方かもしれませんが」
「ん?」
「先の会議を拝聴させて頂いた限りでは、早々豊臣方が不利になることはないと思われます」
「!」
「ですから、ご心配には及びません」
「……そう、だな…」
にこ、と笑ってそう告げる鎮流に、なまじ間違ったことは言っていないために反論できない家康は、曖昧な表情を浮かべて頷くしかなかった。
半兵衛はそんな家康を見て目を細める。
「…鎮流君、この地図を外の箱に仕舞ってきてくれるかい?」
「!はい、わかりました」
半兵衛は鎮流に用事を言いつけ、さりげなく陣から鎮流を外へとやった。
家康は半兵衛の意図に気がついたか、じ、と半兵衛を見た。半兵衛は家康の視線に、ふっ、と小さく笑みを浮かべた。その笑みはどこか楽しそうに弧を描いていた。
「そんなに彼女が心配なら、君が早々に敵を潰せばいいだけだよ、家康君?」
「…意地の悪い人だ、ワシを先鋒に命じたのは、」
「彼女は関係ないよ、そんな発想には至らなかったもの」
「はは…それもそうか」
「…君はずいぶんと、彼女を気に入っているようだね?」
半兵衛はそう言いながら目を細めた。家康は半兵衛のその変化に、困ったように笑う。
「そうだな。彼女は何というか、今まで見たことのない雰囲気を持っている人だから、気になっているのは確かだ」
「それは一理あるかな。まさか僕も、女の子を豊臣に加える日が来るとは思っていなかったからね」
「…なぁ、あなたは本気で彼女を、」
家康はぐ、と拳を作った。半兵衛は家康が言葉を言い切らないうちに、ふふ、と声をあげて笑う。
「軍師にするつもりだよ?何より彼女がそれを承諾した。いくら拾ってきたのが君とはいえ、彼女の行く道を決めるのは彼女だ、そうだろう?」
「……………」
「竹中様、終わりました」
「うん、ありがとう。じゃあ家康君、そろそろ行かないと三成君が騒がしいよ?」
「………失礼する」
鎮流が戻ってきたのを見て半兵衛は家康に暗に出ていけと告げ、家康はそれに言い返せず、ちらり、と鎮流を見ると大人しく陣を出ていった。
家康の視線に気がついた鎮流は、僅かに目を細めた。
「…何か、ございましたか」
「気がついたかい?大したことではないよ、家康君は君が軍師になることが不服なようだ」
「!」
鎮流は半兵衛の言葉に驚いたように目を見開いた。あぁ、と半兵衛は付け加えるように鎮流を振り返った。
「彼はどうやら君を戦火に巻き込んでしまった事を後悔しているようだ。君が心配らしい」
「……確かに、あの方はどなたにも優しそうな御方ですからね」
「おや、なんだか険のある言い方だね?」
「!………」
半兵衛の言葉に僅かに驚いたように半兵衛を見たあと、鎮流は目線を下に落とした。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2014年06月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30