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もうお前を離さない328

「な…何をッ?」
「降参してくだされ。無用な殺生は防ぎたいゆえ」
「き…貴様我らを愚弄するか!」
「そんなつもりはのぅござるが…」
「そうだそうだ!真田はそんな奴じゃないぞ!」
「………。宇都宮殿ッ?!」
突然己の肩を持つ発言が聞こえ、振り返った真田はすぐ後ろに宇都宮がいるのに気が付いて飛び上がった。
傍らに虎を一匹侍らせた宇都宮はぐっ!と親指を立てて笑った。
「久しぶりだな真田!」
「な、何故貴殿がここに?!」
「俺だけじゃないぞー佐竹も尼子も来てるぞ!」
「!!」
宇都宮の言葉に真田は目を見開いた。
「な、何故その御人らが…?」
「ん?俺が誘った!本当は南部と姉小路も誘いたかったんだけど死んじまったからさー」
「…誘った?何故?」
「尼子も佐竹も、それぞれ毛利と伊達に半殺し状態で暇そうだったし、よくは分からねーけどお前が出した手紙…誰だっけ?」
「伊達政宗殿にござる…っと、渡していただけたのでござるか!!」
驚いた真田の声に宇都宮はからからと楽しそうに笑う。
「約束は守るぞ!そう、あれ読んだ時の伊達の顔的に、今度起こる戦…つまりこの戦?が、重要そうに思えたから手伝いにきた!」
宇都宮はそう言ってまたにっ、と笑った。真田はまだ状況が整理しきれていないらしい、ぽかんとした顔のまま宇都宮を見つめた。
その時、一陣の風が吹いて砂が巻き上がった。
「なんだここは。砂がねぇじゃねぇか」
巻き上がった砂の中からぶつぶつ文句を言いながら姿を見せたのは尼子晴久だ。ピンク色の居住まいが殺風景な関ヶ原にはよく目立つ。
「貴殿は…尼子晴久殿にござるか?」
「あん?誰だお前は」
「甲斐が真田幸村にござる」
「真田幸村…聞いたことはある。紅蓮の鬼の二つ名を持つときいてたが…案外顔立ちは普通なんだな。鬼には見えねぇ」
「!」
尼子の遠慮のない言葉に幸村ははっと思った。ぎゅ、と六文銭を握り締める。
「真田はなー、俺と戦った時空からやってきたんだぞ!」
「はいはい散々聞いた」
何だかんだ尼子と宇都宮は気が合うらしい、嬉々として話す宇都宮を尼子は適当にあしらう。
その2人の後ろに、ぬっ、と大きな影が現われた。
「自分、不器用ですから…」
「!なんだお前か」
「ぬぉっ…」
佐竹は直立して立ったまま真田を見下ろし、カクカクとしながら真田に頭を下げた。
真田も慌てて返す。
「…佐竹義宣殿とお見受けいたす!」
「貴殿が、真田幸村殿ですな」
「真田はなー、俺と戦った時「しつけぇな!」
またも同じ事を言おうとした宇都宮に尼子は砂をぶつける。
子供のような2人を横目に、佐竹は横に歩いて道を開けた。
「貴殿が取られた陣は、自分達が中立として抑えましょう。東軍にも西軍にも渡しませぬ」
「!されど…両軍を相手取るのは…」
「何、これだけの乱戦、両軍は陣よりもまず目の前の者を倒すのに躍起になっておりましょう」
「…そうではござるが…」
「…尼子殿は知りませんが、自分は宇都宮殿に聞かされた貴殿の考えに共感したから来たのです」
「!」
「大した力のない、敗者である自分にはこの程度の事しか出来ませんが…」
「…ありがとうございまする。宇都宮殿!尼子殿!次なる陣地に参りまするぞ!」
「おぅ!」
「命令するな!」
真田は腰まで勢い良く頭を下げると、陣を飛び出していった。宇都宮は嬉々として、尼子はやや億劫そうにそれについていった。
「な、何を…」
「自分、不器用ですから…」
佐竹はそう言って、ごん、と大将の頭を叩いて気絶させると、その場に仁王立ちして止まった。
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