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もうお前を離さない308

「さて。貴方はこれからどうするつもりですか?」
「………俺ァ…大谷の野郎はまだ許せねぇが、石田を責める気にはならねぇ…だから東軍につくつもりはねぇ」
「…ふむ」
「…最後の戦が始まる前には決める。大谷の野郎の事も、黒田の野郎の事もな」
「……毛利はどうするんです?」
宮野の言葉にぴくり、と長曾我部の体が跳ねた。それと同時にぶわり、と怒気が膨れ上がる。
「…毛利は一番許せねぇ…!そこまで俺の事が嫌いか…!」
「まぁ嫌いでしょうね」
「なっ!!」
「今毛利は北に行ってますねぇ…」
「毛利ともだ!奴とも話をつけなきゃならねぇ!!毛利の野郎を…!」
「野郎を?」
「…ッ」
宮野の言葉に長曾我部は一瞬詰まった。破槍を担ぎ上げ、僅かに俯く。
「…野郎が俺を嵌めたのは薄々見当がつく…。………、宮野。もしアンタが俺の立場だったら3人とも許すか」
「言ったはずです。私は自分しか憎まない」
「…ッ……。……確かに俺が悪い…俺が悪いって事ぐらい、分かってる……」
「……。どれだけ悔いた所で失ったものは取り返せない」
「ッ!」
宮野はふい、と長曾我部から視線を逸らすと一歩二歩、横に歩いた。
「私は、死なせてしまった人にすまないと思うなら。……その人達が、また生まれてきたいと思える世を作る事が、一番の償いになるんじゃないか、そんな風に思ってます。戦は大切なものを守るためにしてる人がほとんどですから」
「…!」
「喧嘩両成敗ともいいます。…どちらも許せないなら、踏ん切りをつけて一思いにどちらも許してしまえばいいんじゃないですか?」
宮野はそう言うと長曾我部を振り返り、にや、と笑った。
「後悔したって何も始まらない。乗り越えて進まなきゃならない。…でしょう?」
「…ッ。…大谷や黒田を許すかわりに…俺自身も許せと言うのか?」
「自分は自分でしか許せません。誰かに許すと言われても、自身が許さなかったらいつまでも許されない」
長曾我部は宮野の言葉に目を伏せると天を仰いだ。


 「…村越殿。黎凪の家族を殺した者が分かっておる事は佐助より聞き及んでおりまする。……誰なのでござるか?」
「…?黎凪…話してないんですか?」
一方、大阪城に帰り着いた真田は、大谷の元へと向かう前に村越を振り返りそう尋ねた。村越は意外そうに真田を見る。
真田はむぅ、と小さく呟いた。
「…あやつが隠しておるのならば、聞くべきではござらんな。…されど…憎んでおらぬというのは、まことにござるか」
「…許しはしない、とは言ってましたけど。怒ったり、恨んだりしている様子は全く…。…それだけ、お母さんの事嫌いだったのかな…」
「…母上殿を、か………」
「…幸村さんは、そういう黎凪をどう、思ってますか…?」
村越の問いに真田は振り返り、薄く笑みを浮かべた。
「…、どうにもござらん。某があやつを好いておる事、その思いに変わりは無い故。ただ…理由はなんであれ、相手の罪を許すことが出来るのは、薄情と思われようとも、強き事だと、思うておりまする」
「…幸村さん」
「大谷殿をあまり待たせるワケには参りませぬな。では、某はこれにて」
真田はそう言って頭を下げると村越に頭を下げた。村越は走り去る真田を見送った後、僅かなため息を吐いた。
「…あ、あのぅ……」
そんな村越に、おずおずと話し掛けてきた者がいた。
「?…小早川殿?」
村越は意外そうに小早川を振り返った。
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