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もうお前を離さない321

「…村越。私には刑部以外、もう…何もない」
「?」
「……私は必ず生きて還る。だから……考えておいて欲しい事がある」
「…!……私は…私には…」
一瞬村越の顔が赤くなったが、すぐにその赤らみは消えた。
「貴様が奪ったのではないだろう。私は貴様より遥かに多くの命を奪っている。私が貴様を恐れる謂われなどあるものか」
石田はそう言って村越の肩を掴んだ。村越は俯く。
「…でも…怖いんです、また…ッ」
「…言っただろう。私にはもう何もない。だから貴様に奪われるものもない」
「大谷さんがあるじゃないですかっ」
「刑部はこれ以上無い程不幸だ」
「!」
「だがその分悪運も強い。貴様についているらしい死神など敵ではない」
「ざっくり凄い事言いますね!」
「…村越」
石田は小さくそう言うと村越の髪を掬った。
「貴様は事を大きく捉えすぎだ」
「…私は黎凪の、三成さんにとっての徳川家康と同じなんですよ」
「本人が許したのならば貴様はそれを受け入れるべきだろう。いつまでも引きずるのは真田の嫁に対する侮辱だ」
「!」
「違うか」
―――貴殿がそれを気にし、今のように遠慮するような態度を取られては、あやつは必ず悲しむ!
「あれと奴の母親がどういう関係かは知らんが、家族を殺されて簡単に許せるとは思えない」
石田の真田の言葉が頭の中に響いた。村越は苦笑いを浮かべる。
「……すいません。今の自分が黎凪を傷つけてるのは…重々承知してます」
「?真田の嫁など関係ない」
「!」
「私が話しているのは貴様の事だ」
「……。三成さんって優しいんですね」
「?!何の話だ!?」
「…分かりました、考えます」
村越はそう言うと石田に向かって笑ってみせた。



 「Hey」
「…独眼竜か」
一方、その頃の東軍陣営では、ぼけっとした様子で徳川が1人ぽつんとたたずんでいた。半時以上動かない徳川に、伊達は痺れを切らして話し掛けた。
伊達を振り返った徳川は心ここにあらず、といった様子だった。伊達は座る徳川の隣に立った。
「何ぼーっとしていやがる。明日には発つんだぞ」
「…あぁ…そうだな」
「Last battleだな…」
「…あぁ…そうだな」
「…。おい、黄色いたぬき」
「…あぁ…そうだな」
「Listen to me!!」
「うぉ?!」
伊達は徳川が話を聞いていない事に気が付くと本気の力で徳川を蹴り飛ばした。徳川は数メートルごろごろと転がった後、足の間から伊達を見上げた。
「おぉ独眼竜!どうかしたか?」
「てめえ何1つ話聞いてねぇな!」
「?す、すまん。考え事をしていてな」
徳川はそう言うと苦笑いした。伊達はけっ、と毒づくと転がした徳川の隣に座った。
徳川は己の隣に座った伊達を見上げた後空を見上げ、ぼそぼそと話し始めた。
「…独眼竜。ワシはやり方を間違ったかもしれない」
「は?」
「元親と大阪城に行った時、初めて見た女子に言われた言葉が頭から離れないんだ」
「女…?……宮野のfriendか?」
「かもしれん。とにもかくにも、その女子に言われたんだ、全ての元凶はワシだとな」
「……マジにとったのか」
「…確かに、この戦はワシが元凶だ。だからこそ、ワシが止めなければならない」
徳川の言葉に伊達は目を細めた。
徳川はよっ、と体を起こし、伊達とは反対の方向を向いた。きゅ、と拳を作り、悲しげに笑う。
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