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もうお前を離さない307

「でもあくまでそれは今が戦争中だから。相手の事を憎める立場にないからね」
「何…?」
宮野はちらと真田を見上げた後視線を長曾我部に戻した。
「例えばアンタを人殺しと罵り憎んだとしても、幸村だって人殺しであり憎まれる立場にある」
「…ッ!」
「戦場での死は仇とせぬのが戦場の礼儀。互いに死は覚悟して戦ってるはず、死んだとしても憎む対象にはならない。合意の上だから」
「…それでも憎んじまうのが人間だろぅがよぉ…」
「戦うと覚悟した人間なら、それは乗り越えるべきものだと思う」
宮野の言葉に長曾我部は眉間を寄せた。がん、と破槍を地面に突き立てる。
「…なら石田はどうなんだ。あいつは今、仇を討つ為に戦を起こしてるじゃねぇか!!」
「…三成さんは判断しかねる。確かに秀吉公は戦場で死んだ、でも裏切りというオプションがついてる。味方に殺されたんだ。いくら合意の上での戦いとはいえ、今回それを合意したのは秀吉公だけだ。三成さんは合意してない」
「ッ!!」
「…とにもかくにも。私は誰を殺されようとこの考えを改めるつもりはないよ。私は戦うと決めたし、私も人殺しだから」
「…ッ」
宮野の言葉に長曾我部は俯いた。真田は黙って宮野を見ている。
宮野は長曾我部を見据えた。
「でもね、私が許さないだけであって、アンタがどう判断するかはアンタ次第だ。黒田は許して大谷は許さない、それだっていい」
「……半分はアンタの言葉に納得しちまってんだよ…。大谷の野郎だって……石田の事をそれだけ思ってるって事も分かってる。けどな、頭じゃ納得出来ても、出来ねぇこともあんだよ…!」
長曾我部はそう言って目を閉じた。破槍を持つ手がぷるぷると震えている。宮野と真田は顔を見合わせ、そして長曾我部を見た。
と、そこへ。
「黎凪〜、大谷さんが幸村さん……って…」
「!芽夷」
真田を探しに来たらしい、村越が姿を見せた。村越は長曾我部の姿を認めると口を噤み、僅かに長曾我部をにらみつけた。
「…なんで長曾我部さんが……?長曾我部に会いに来てたの」
「違う違う。長曾我部は乱入してきただけ。私がこの前言った通りの事を、大切な殺されても実行出来るのか確かめに来たんだと」
「ふぅん…。…無駄なことを」
「!何だと?」
「黎凪はできない約束はしない。するとしても、その事をはっきり口にする。…それに、人を憎むことに関しては、黎凪はそんな感情を欠落してるように感じるし」
「欠落…?」

「黎凪は自分を家族を殺した人間さえ、憎んでないもの」

「ッ?!」
村越の言葉に長曾我部は目を見開いた。宮野は恨めしげな目を村越に向ける。
「芽夷」
「…ごめん。でも本当の事だから。黎凪の考えを変えるのは容易な事じゃないよ。幸村さんを殺されても黎凪の考えは絶対に変わらない。黎凪は、己が持つ以上、それを信じてるから」
「………ちっ。そうかよ」
長曾我部はそう毒づくとぷいと顔を逸らした。村越はそれを見た後宮野をじ、と見た。
「…、黎凪幸村さん借りるよ。まだ何か言いたいことあるんでしょ」
「ん…。…、ありがと、芽夷」
「行きましょ、幸村さん」
「…、黎凪」
「うん。大丈夫…ごめんね。長曾我部にだけ、バラしておこうと思うから」
「…分かった」
真田は宮野の頭をぽん、と一度優しく叩くと村越と共に大阪城へ戻っていった。
長曾我部は宮野を見た。
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