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もうお前を離さない324

「Shit!!」
「政宗様!ぐぁっ?!」
「?!独眼竜!片倉殿?!」
徳川は霧で視界を塞がれた中、大声で2人を呼んだ。だが、それに返す声はない。
咄嗟に走りだそうとした徳川だったが、それを察知した本多に抱き抱えられてしまい、叶わなかった。
「…!…いない…ッ」
しばらくして、霧が晴れた。
その時にはもう、伊達と片倉の姿はなかった。


 「…ッ」
伊達は不規則に揺れる物の上でなんとか己を押さえ付ける者を見極め、小さく舌打ちした。
少しして、それは動きを止めた。
「どわっ!」
伊達はその瞬間、その者を蹴り飛ばして離れ、着地した。しゃがんだまま刀を構える。
蹴られた男は涙目で伊達を睨んだ。
「痛いな!」
「痛いなじゃねぇだろ。テメェどういうつもりだ」
「一生懸命考えた!お前だけを連れてくる方法を!」
「だからどうした」
伊達を攫ったのは宇都宮とその虎だった。宇都宮はにかっ、と笑うと伊達に向かって手を差し伸べた。
伊達はそれを振り払って立ち上がる。
「ぐはっ!」
「!小十郎!!」
そこへ、少し遅れて片倉を連れてきた虎が到着した。乱暴な気質らしい、虎はぽいっ、と片倉を放りそのまま宇都宮の隣に座った。
伊達は慌てて片倉に駆け寄った。
「政宗様!」
「…テメェ宇都宮、どういうつもりだ!」
片倉を抱え起こした伊達は宇都宮を睨んだ。だが宇都宮は気にする事なくごそごそと懐を探ると、見つけたそれをぱっ、と伊達に差し出した。
それは文だった。伊達はその手を見て眉をひそめる。
「…真田の手だな。なんでアンタが持ってやがる」
「!」
「おぉ、頼まれたからな」
「頼まれた?」
文を開こうとした伊達は宇都宮の言葉に目を上げた。
「“政宗殿以外の者には読ませてはなりもうさぬ物なのでござる。容易に運ぶとは思えませぬが……なんとか、お願い申し上げまする!”言うてたぞ。だから攫ってきたんだ」
「…俺以外には読ませてはならない…だと?ならなんで小十郎まで連れてきた」
「んー?俺が出した文はどっちが持ってる?」
「……俺だ」
片倉は懐から宇都宮の文を取り出した。
その途端、虎が片倉目がけて飛び上がった。
「「?!」」
片倉と伊達は慌てて地面を蹴りそれを避けた。宇都宮はそれを見て、からからと笑った。
「その文にマタタビをつけておいたんだ!マタタビの匂いに虎が寄せられるから、霧の中でも見つけられる!凄いだろう!!」
「…虎ってマタタビ好きなのか」
片倉はぽいと文を放り投げ、伊達はぼつり、とそう呟いた。宇都宮はびっ!と親指を立てた。
「真田の恋人が言っていたんだ!」
「!宮野か…」
「ま、それはともかく。文読め!お前が読んだら焼き捨てるからな!」
宇都宮の言葉に伊達は文を開いた。読み始める前に、宇都宮に視線を戻す。
「俺だけに、って言ったな。小十郎も駄目なのか?」
「ん??分からん!」
「…オメェ…」
「だが真田は恋人の…なんだっけ?!」
「…宮野黎凪だ。それがどうした」
妙な所で自信満々な宇都宮に伊達は小さくため息をつきながら先を促した。
「そう!そいつにも内緒で出したと言っていたぞ!」
「!!」
「宮野にも秘密、か…。All right,俺1人が読む。勘弁しろ小十郎」
「はっ…」
伊達は文に視線を戻した。片倉は伊達から少し離れた所に座し、宇都宮は座らせた虎二匹の間に座り、虎にもたれかかって伊達が読み終えるのを待った。
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