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もうお前を離さない317

「…私にはよく分からない」
「ちゅーしといてぇぇ?」
「だ、だからあれは!」
慌てたように顔を赤くさせた石田に宮野はあからさまにため息をついた。
「まぁいいですけど…責任本当に取るつもりなら覚悟しといてくださいよ。芽夷は貴方の事嫌いじゃないから尚更大変ですし」
「……。…貴様は奴のことをどう思っている…?」
石田の言葉に宮野は笑った。眉尻を下げ、どこか悲しげな顔で笑った。
「…申し訳ないと思ってますよ」
「申し訳…ない?」
「許してあげたいですよ、私は。…でも、芽夷は私に憎まれたがってる」
「…………………」
「多分、憎まれた方が楽なんだと思います。自分を許せないから、他人にも許してほしくないんだと」
「……何故だ?他人が許そうと、己は許さなければいいだけだろう」
「そんな事簡単に出来ませんよ。…ほだされて許してしまって、結局後悔する」
「…」
「人は貴方が思っているほど強くない…」
宮野はそう言うと石田に向き直った。石田の目をちら、と見てすぐに逸らす。
「…どちらにせよ……私に芽夷は救えない…」
「…………」
「……三成さん。関ヶ原の戦は全力で援護します、そのかわり。絶対に死なないでください」
「!」
宮野はそう言うと石田に向き直った。その目には強い色が宿っている。
「責任取る取らないに関わらず、まずは生きてください。それが今、あの子に最も必要な事」
「……1つだけ…」
「?」

「1つだけ聞かせろ。…私や村越の想いは、恋慕なのか?」

「………。一種の愛の形だとは思いますよ。それがうら若い乙女が胸踊るような恋慕かと聞かれたら、……違う気もします。…2人はもう、1つになってるような感覚があります。片方が無かったら生きていけない…そんな感覚が」
石田の問いに宮野は考えながらそう答えた。石田は僅かに目を伏せ考え込んだ後、視線を上げた。
「私のした行為は奴を苦しめただけか」
「…何か言ってましたか?」
「…う、嬉しかったと。そして、私はだめだ、と」
「…芽夷は愛される権利が無いと思い込んでる。だから、だめだと言ったんだと思います。でも私は、嬉しかったというのが、芽夷の本心だと思いますよ。そういうのが真っ先に漏れる子なので」
宮野はそう言うと、ふぅ、とため息をついた。石田は指先で唇に触れ、ぎり、と奥歯を鳴らした。
「…私はどうすればいい」
「それは貴方が決める事。あなたの胸にある想いを貫けばいい。…強いて言うなら、死んではダメです」
「………………」
「…貴方は今迷ってますね。でも、貴方がやりたいようにするのが一番だと思います。貴方は今、誰かの左腕ではなく、大将なんですから」
「!」
宮野の言葉に石田ははっ、と宮野を見た。宮野はにや、と笑うと出刃包丁を石田に突き付けた。
「…あとは全て、貴方次第です」
「………宮野といったな。最後に1つ…貴様は、仇討ちをしてほしいと思うか」
「…。思いません。大事な人なら尚のこと、幸せになってほしい。死んでも尚、想い続けてくれるのはうれしい、でも、その人には自分の人生を大切にしてほしいと思いますから」
「…そうか。邪魔をした」
石田はそう言うと踵を返し、静かに武田軍陣営を離れていった。宮野もただ黙って石田を見送った。
「……あとは全て、貴方次第。…さて、どうなるかな」
宮野は1人そう呟くと、元の仕事に戻っていった。
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