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もうお前を離さない310

「ヒヒヒ…頭を冷やすか」
「…あの後三成殿をお見かけしませぬが…大丈夫にござろうか」
真田の言葉に大谷は目を細め、ふい、と視線を逸らした。
「…そうよなァ…我もあまり会うてはおらぬ故…よくは分からぬ」
「…、………」
真田は大谷の言葉にぐ、と拳を握る。会わないというのが、決して戦前の多忙の為だけではないことくらい簡単に分かったからだ。
大谷は真田をちら、と見た後、再び視線を逸らし庭へと向けた。
「三成は天君の所におる。気になるならば会いに行きやれ」
「…分かり申した。これにて失礼つかまつる」
真田はそう言って大谷に頭を下げると部屋から出て、馬小屋へと向かった。

 「三成殿!」
「…真田か」
馬小屋に到着すると、石田は天君の前にたたずんでいた。石田は真田の声に僅かに驚いたように真田を振り返った。その表情はぱっとしない。
真田は石田に駆け寄った。石田は鬱陶しげに真田を振り返った。
「…何か用か」
「用はありもうさぬ!貴殿に会いに来たのでござる」
「……。は?」
「そんな事よりも、お時間があるようならば、某と手合わせしていただきたく!」
真田はそう言うとわずかに笑って手に持った槍を見せた。石田はぽかんと真田を見た後、ふ、と薄く笑い立て掛けてあった刀を手に取った。
「手加減はしないぞ」
「無論!」
2人は己の得物を構えた。


「ただいまー」
「!黎凪」
ちょうどその頃、宮野が帰って来ていた。炊事場に顔を出した宮野に、村越はどこかほっとしたように宮野に駆け寄った。
「大丈夫だった?」
「うん、大丈夫大丈夫。長曾我部は帰ったよ」
「何を話したの?」
「それはナイショ。長曾我部だけが知ってるから効果があるっていうか…なんていうか、そんなもん。一応芽夷は石田軍だからな」
「…。分かった、じゃあ聞かない」
村越の言葉に宮野はすまなそうに笑うと肩を竦めた。
「ところで、幸村どこにいるか知らない?」
「え?さぁ…大谷さんの所にいないの?」
「大谷さんトコか。…、…大谷さんと三成さん、やっぱりギクシャクしてるよね」
「そうだよね…最後の戦?まで、あんまり時間ないのに」
村越はそう言うとしょんぼりと俯いた。宮野はそんな村越にくすりと笑う。
「…大丈夫だよ。あの2人は」
「…、そう思う?」
「私はそう思うよ。芽夷はそう思わない?」
「…私はそう、信じたいかな」
村越はそう言うと宮野に向かって笑ってみせた。宮野はその笑顔を見ると、ぱしん、と村越の肩を叩いた。
「そんなら、旨いメシ作るとしましょうや。旨いご飯は人を元気にさせるからな!」
「…。ふふっ、あははっ!黎凪らしいなぁ」
「ハクナマタタってどこかの猿が言ってるだろ?まぁあれほどポジティブになれとは言わないけど、2人が悩んでる時にお前まで悩んでたら余計どんよりするだろ?」
にや、と笑って言った宮野の言葉に村越も笑みを浮かべる。
「黎凪はいつもそうだよね。深く踏み込んでこないけど、ちゃんと分かってる。…、それはとても救われる」
「そうか?そう思うんなら、お前も2人を救え。三成さんの刃を止められたんだ、それくらい出来るさ!」
「はいはい。それなら黎凪も手伝ってよ。バイトのおかげで料理上手いんだから」
村越は苦笑しながらも、宮野のそんな態度にどこかほっとした心地を感じた。
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