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もうお前を離さない325

少しして文を読み終えた伊達は、一旦目を伏せ深呼吸した後、文を宇都宮に投げ返した。宇都宮は文を受け取った後、はっ、と何かに気が付いたように目を見開いた。
「火種を持ってくるのを忘れた!!!!」
「ッテメェはなんでいちいちそう自信満々なんだ!!」
思わず伊達が突っ込んだが、宇都宮は気にする事なく文を手に考え始め、そして、破るか!と言うと文をびりびりと引き裂いた。
その様子に片倉は眉をひそめた。
「…宇都宮。お前、文の中身は気にならねぇのか?」
「ん?気になるぞ!」
「読もうとは思わねぇのか?」
「これは真田からえーっと…?」
「伊達、政宗だッ!!どいつもこいつも忘れやがって!」
「真田から伊達への文だからな!」
伊達の激昂を無視し、宇都宮はいい笑顔でそう言い放った。
片倉はふぅ、と小さくため息をつく。
「今のおめぇはただの使いっ走りじゃねぇか。なんでそこまでする?下手すりゃ死んでいたぞ」
「真田は仲間だからな!」
「おめぇには何の利益もねぇ。危険しかねぇのにか?」
「んー?お前は何が言いたいんだ?」
「仲間だからという理由だけで引き受けるにしては危険が多すぎると言っている」
「??危険が多いと引き受けないのか?そりゃ仲間じゃないだろー!」
「!」
宇都宮の言葉に驚いたように片倉と伊達は目を見開いた。
「それに真田には命助けられた恩もあるしなー!」
「………だが…」
「?なんだ?駄目なのか?一生懸命考えたんだぞ!」
「わ、分かった…」
「じゃあ俺帰るなー。なんか真田に伝える事あるか?」
宇都宮の言葉に伊達は視線を上げた。
「…確かに受け取った、そう伝えてくれ」
「分かった!じゃあな!」
宇都宮はにこりと笑ってそう答えると虎の上に飛び乗り、そのまま去っていった。
伊達と片倉はそれを見送った後、互いを見合った。
「……真田と確かに、気は合いそうな奴だな」
「…政宗様…具体的な事はお聞きしませぬ、文には何が?」
「…関ヶ原の戦……そこで起こるかもしれない事」
「起こるかもしれない…?」
「向こうもどうやら宮野の策略に陥ってるみたいだぜ。こりゃあ存外、家康の説得は上手く行くかもしれねぇな。……真田はそれの成功率をあげる為に俺に知らせた、って所か」
伊達はそう言うとにやりと笑った。そして、片倉を振り返る。
「面白くなってきたなぁ。本当に和睦するかもしれねぇ」
「政宗様……」
片倉の声色に伊達は苦笑した。くるりと踵を返し、その地からもよく見える東宮陣営に向かって歩きだした。
「これ以上死なせずにすむ。結構じゃねぇか」
「…そうですな」
片倉も踵を返した。



 それから三日後。石田率いる西軍は、関ヶ原の地に到着していた。
宮野と村越は戦場が見下ろせる場所に来ていた。反対側には、東軍陣営の証である葵の紋が見える。
「…場所は乱入っぽいな。乱入プラスアルファ」
「乱入…プラス?」
「乱入には大筒ないから」
「…成る程」
宮野は大筒を見上げ、目を細めた。黒光りするそれは、不吉の象徴のようにも見える。
「黎凪!」
「!幸村」
「幸村さん」
その2人の元へ真田が走ってやってきた。真田はちら、と葵の紋を見た後、2人に目を向けた。
「開戦は明朝。辰の刻辺りになるようだ」
「辰の…8時か」
「早いね」
「…。こんな事を聞くのもなんだが…この世界は2人の世界の史実に基づいておると言っておったな」
「うん。まぁ1割くらいだけどね」
「史実では、どちらが勝った?」
「!幸村さん」
真田の問いに、宮野は一旦目を伏せた後、真田を見た。
「小早川の裏切りを筆頭に、西軍の部隊に裏切りが続出。大谷吉継が切腹したのが拍車をかけ、西軍は半日で負ける」
宮野の言葉に真田は僅かに眉間を寄せた。
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