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もうお前を離さない306

「そぉいっ!」
そんな掛け声と共に宮野は最後の1人を投げ飛ばした。4人とも全員伸びたのを確認すると宮野は真田を振り返った。
「大丈夫か黎凪!」
真田も宮野の方を同時に振り返っていた。周りには足を押さえた男達が倒れている。
「平気だな…」
ほっ、と息を吐いた真田の上に、さっと影が差した。
「幸村!」
「!なっ、」
次の瞬間、真田は網の中に捕われていた。長曾我部の四縛だ。
宙ぶらりんの形になった真田の首元に、四縛を放ったと同時に姿を見せた長曾我部が短刀を突き付けた。真田は僅かに唇を噛む。
宮野はそんな長曾我部に、嘲るような笑みを浮かべた。
「どうも、長曾我部元親。どうやら私か幸村に…いや、私に用があるみたいですね」
「よぅ姫さん。アンタに話があってなァ」
「私は逃げませんよ。幸村下ろしてもらえます?その体勢は腰が痛くなる」
「アンタの解答次第だ」
長曾我部の言葉に宮野は眉を寄せ、そして小さくため息をついた。兜割りを鞘に納め、それを地面に置いて数歩下がった。
長曾我部はその一連の動作をやや意外そうに見た後、宮野を見据えた。
「じゃあ、話ってなんです。大方見当はつきますけどね」
「一昨日の事だ。黒田が謝りに来た」
「!」
「へぇ。それで?」
「…知ってたのか」
動揺もせずに聞き返した宮野に、長曾我部は僅かに苛立ったようにそう聞き返した。宮野は肩を竦める。
「黒田さんの姿を見なくなったから、あぁ何かしら言いに行ったんだなぁとは。で、それでどうしたんです」
「……。まだ決めちゃいねぇ…その前にアンタと話つけときてぇと思ったからなァ」
「長曾我部殿…ッ」
「話ってなんです?」
「…黒田の野郎が悪いとは思えねぇ。だが黒田を許すんなら、大谷の野郎も許さなきゃならねぇ…アンタの言葉は確かに一理通ってるからな」
「…はぁ。それで?」
「アンタの言葉は一理通ってる。だが、アンタがその言葉を実行出来るなら、な」
長曾我部はそう言って、真田の首元に押しつけた短刀を持つ手を、更に真田の首元へ押しつけた。
宮野は眉を寄せた。
「つまり、私が大切な者を殺されても同じことを言えるか、と?…そんな事の為に幸村に手を出すのは許しませんよ」
「はっ!よく言うぜ。これは俺が西軍を不利にさせる為に仕組んだ策略だぜ…?」
「…はぁ。なるほど?そちらがそういうつもりなら仕方ありませんね」
「…何が仕方ねぇんだ?」
今まさに真田を殺す、そう言ったと同じ発言をしたというのに焦りもしない宮野に長曾我部は半ば怒りながら、半ば戸惑いながらそう尋ねた。宮野はくすり、と笑う。
そして不意に驚愕した表情を浮かべ長曾我部の後ろを指差した。
「毛利!なんでアンタが?!」
「な、何ッ?!」
長曾我部はばっ、と勢い良く後ろを振り返った。
だが、そこに毛利はいない。
「…?ッ?!」
キョロキョロと毛利を探す長曾我部であったが、直後頭を襲った衝撃にそれが嘘だと悟った。
ふらふらと二、三歩進んだ後振り返ると、真田の槍で四縛の縄を切り真田を四縛から出している宮野がいた。
ちっ、と長曾我部は舌打ちした。
「騙しやがったな…!」
「騙してないさ。ただの策略」
「けっ…」
「長曾我部元親。信用しないかもしれないけど、私は出来ないことは口にしない。幸村が殺されたら、私は私を憎む。何もできなかった己の弱さを」
「…ッ」
「でも相手を憎むかと言われたら、多分憎まない。相手は自分のやるべきことをやっただけ…死んだのは、幸村が弱かっただけだ。相手は別に、悪くない」
宮野はそう言って長曾我部を見た。
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