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もうお前を離さない318

翌日。出陣の用意に大阪城は騒めいていた。
宮野と村越もそれに違わず、兵糧の支度にばたばたとしていた。
「はいはいはい米投入ー!」
「味噌が足りーん!!」
「はい味噌パース!」
「はい取ったー!」
会話は非常に楽しげである。2人は焼おにぎりを作っていて、宮野は釜に米を投入した後、味噌を受け取り塗っておにぎりを焼いている村越の隣に座った。
「懐かしいな〜焼おにぎり。小学生の時から食べてないよー…」
「…ねぇ黎凪。黎凪…少し前からテンション高いよね?」
嬉々としておにぎりを焼く宮野に村越はそう尋ねた。宮野はん?と村越を振り返り困ったように笑った。

「あはー…まぁ、怖いからねぇ」

「怖い?黎凪が?!」
驚いてそう叫んだ村越に宮野は不貞腐れたようにぶぅ、と呟いた。
「怖いさー戦争だもん。幸村死ぬかもしれないし三成さんと徳川殺しあっちゃうかもしれないし。……、どちらかが死んだら、私がここに来た意味がまるで無くなるもの」
「…そんな事…」
「あるんだなぁ私にとっちゃ。明智さんを危険に晒してまで来たんだ、生半可な成果は出せない」
「……まさか、そんな義務感で動いてるの?」
「いんやー。義務感なんてこれっぽっちも。ただ私がそう思ってるから」
ほっ、と金網を振り上げおにぎりをひっくり返した宮野は村越の方を見て、僅かに目を伏せた。
「…それでも成果は出したいじゃないの。誰かを…助けたいじゃん」
「…黎凪……。…後悔してる?」
「何を?」
「そんな責任背負った事」
押し黙ってしまった宮野に、村越は金網の上におにぎりを乗せながらそう尋ねた。宮野は村越を見た後、しばらく考え込んだのち、笑みを浮かべて顔を上げた。
「してない。…達成出来なかったら悔やむけど、ここに来て挑戦した事は後悔しない」
「…やっぱり黎凪は強いね。私だったら後悔すると思う」
「私はこの世界が好きだからさ。リアルに生きる糧みたいなもんだったし。ここに来れた事、そして触れ合う事ができた、それだけで私の人生は充実してるよ」
「…黎凪………」
「よく考えてみろ。私は世の中のゲームファン・アニメファンの女子が何より望む画面の向こう側に来たんだぜ?お前テニプリの世界行けて後悔するか?」
「や、何があってもしない!」
「だろ?」
後半がいささか不純だが、村越はなんとなく宮野の言葉に納得したようであった。
村越は再び金網を振り上げおにぎりをひっくり返した宮野に、ぽすん、ともたれかかった。
「なんだなんだなんだ重い重い重い」
「失礼な。…ねぇ黎凪……。私…実は昨日ね、」
「三成さんにちゅーされたんだろ」
「うん、そう………って何で知ってんだぬさ!」
「それ仙台弁?突然地元の飛び出すなお前さん」
「じゃなくて何で知ってんの本当に何で知ってんの?!」
村越は真っ赤になって宮野の体をがくがくと揺さ振った。宮野はギブギブ!と言いながら何とか村越の手を離し、やれやれとため息をついた。
「三成さんに聞いた」
「…ぇぇぇえええ?!」
「なんか相談しにきたから。なんでそんな事になった、って聞いたら『……口を吸ってしまった』と」
「やめて物真似やめて!」
どこか顔を青ざめさせて顔を横に振る村越に宮野はふぅ、とため息をつく。
「芽夷さぁ、もう忘れていいんだぜ?」
「!」
「いつまでも引きずられても私も辛いしさ」
宮野の言葉に村越は俯いた。
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