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もうお前を離さない312

「…、守る、か……」
「?三成…さん?」
「…何でもない、私は降りる。刑部!」
「!」
「…、」
石田の言葉に大谷と真田の体が僅かに跳ねた。村越ははらはらと、宮野はただ黙って石田の次の言葉を待った。
「…行くぞ」
「!!」
「ボヤボヤするなっ!歩みを止めている暇などない!」
「……。ヒヒ、相分かった」
ぽかんとしていた大谷ははっ、と我に返り、そして苦笑するとさっさと屋根から降りた石田を追って姿を消した。
それを見届けた3人は真田を中心に頭を寄せる。
「……完璧許したね三成さん」
「変わらぬ…そして揺るがぬ」
「……よかったぁぁぁぁあぁ」
三者三様にそう言い合い、村越はほっと肩を降ろした。宮野と真田は顔を見合わせ、互いに笑いあった。
「…よかった……」
「…のぅ黎凪。お前は、どうしてあそこまで信じられたのだ?」
「ん?」
「お前は、お二人が元のとおりになると、確信していたかのように感じるのだ」
真田の言葉に宮野はくすりと笑った。
「三成さんは器用な人じゃない。大谷さんを許しておきながら、大谷さんの罪を憎むような器用な真似はできないと思ってただけ」
「むぅ。成る程」
「…じゃあ2人がギクシャクしてたのはなんで?」
「大谷さんに遠慮してたんだと思うけど。大谷さんは器用な人だしね。でも、大谷さんも腹を括ったと思う」
「腹を括った…?」
「もうこんな事はしないと思う、って事」
宮野はそう言うとにっ、と笑い、ほっとしたように大阪城の天守閣から臨める大阪城下を見つめた。真田はそんな宮野を見つめた後、ふっ、と笑みを浮かべて宮野を抱き寄せた。宮野はぎょっとして真田を見上げた。
「…芽夷がそこにいるのに。珍しいね」
「村越殿は今更だろう…俺が会った最初のお前の友だぞ」
「まぁ、私は気にしないからイチャイチャしてなよ」
「揶揄んなよ〜…。……幸村、出陣はいつになる?」
真田は宮野の言葉に視線を空へと向けた。
「…恐らく、後三日もすれば大阪を発つであろう」
「三日……」
「…黎凪。一つ言っておく事がある」
真田はそう言って宮野から離れ、向き直った。宮野は僅かに驚いたように真田を見上げた後、薄くにこりと笑った。
「分かった」
「え、分かったの?」
「参戦するなって言いたいんでしょ?」
挑戦的な笑みを浮かべながらそう言った宮野に、真田は困ったように笑った。そんな真田に宮野は苦笑する。
「そんな顔しないでよ。…ただし、関ヶ原までは私も行くよ。その代わり、本陣からは出ない」
「…それなら、いい」
「………なんで?」
「…、関ヶ原が戦いは全ての決着がつく戦場。あまり黎凪を危険な場所には連れていきたくない…」
村越は真田の答えに、宮野を見る。
「…黎凪はいいの?」
「いい。…、言うべき事は言った。後は本人次第だから」
「…でも、三成さんと徳川を和睦させるつもりなら、決めの一言があった方がいいような気がする……」
「…そうかもしれないけど……私はこれ以上介入すべきじゃない、なんか、そう思うんだ」
「…黎凪がそう思うんなら…別にいいけど…。………私はそこまで、人を信用できない」
「芽夷……」
「…私は…大谷さんの事もあったし…。……人が信用できない…」
村越はそう言うと宮野から視線を逸らし、屋根から天守閣の欄干へと飛び移った。欄干の上に器用に立ったまま、村越は宮野を見上げた。
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