スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない311

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
真田は槍を振り上げ地面を蹴った。石田は振り下ろされた槍を難なく躱し、真田の懐に入る。
「!」
真田はぎょっとして飛びずさった。だがその瞬間に石田の刀は抜かれ、真田が再び目にした時には抜き身の刀が晒されていた。すっ、と腹に走った痛みに真田はにっ、と笑う。
笑った真田に石田は不可解そうな視線を向けた。その視線にまた真田は笑う。
「…、何がおかしい」
「さすが三成殿だと思うたまで!この幸村、胸がたぎって参り申したぁぁぁぁ!!」
「…ふん。煩う奴め」
石田はそう言いながらもその口元は僅かに笑っている。
真田は再び地面を蹴った。
「風林火陰、山雷水ッ!」
「緋色の羽よ、私を抉れッ!!」
互いに技を放ち、次第に2人の手合わせはヒートアップしていく。
石田の斬撃を、真田は槍を手の中で回転させる事で防ぎ、刀が鞘に収まった一瞬に槍を突き出す。石田はぎりぎりの所でそれを避け、腰に構えた刀を勢い良く抜き放つ。
真田は回したのとは反対の槍の腹でそれを受け、もう片方の槍で刀を挟み、地面に叩きつけた。石田は刀を引き、土ごと薙ぎ払いながら、その勢いで体を回し、体ごと斬り掛かってきた。真田は避けるために後ろへ跳躍し、空中でくるりと回って着地した。
「幸む…って何してんのアンタ等!!」
「み、三成さんッ?!」
と、そこへ昼餉が出来たのか、宮野と村越がやってきた。宮野はどこか呆れたように、村越は仰天したように2人を見た。2人の動きがぴたりと止まり、宮野達を振り返った。
「む?おぉ、如何した!?」
「そりゃこっちの台詞だ」
「ななな何やってんですか何してんですか」
「手合わせだ」
「殺気ばんばん放っといて手合わせですか?!」
「いやいやいやいやないないないない」
「…何なんだ貴様等は…」
ないないない、と言いながらぶんぶんと顔の前で手を振る2人に石田はどこか呆れたように呟いた。
「で、如何したのだ?」
「幸村はちょっとは人の話聞こうかー?!」
「ぬぉぁあぁぁぁっ!?」
「えっあっご飯です!はい、お昼です!」
一方の真田はきょとんとしながらそう尋ね、怒った宮野に渾身の飛び蹴りをくらわされてしまった。村越ははっとしたようにそう答えにこりと笑った。

 「痛いでござる…」
「自業自得という言葉をあげよう」
「何故!」
はい、と眼前に湯呑みを突き出され、真田はぶつぶつ言いながらもそれを受け取った。
「………、うまい」
「!本当ですかっ?!」
「やれそう身を乗り出すな。ほれ、椀が倒れる」
「えっあっわっすいません!」
石田はぼそり、とそう言い、その言葉に村越が身を乗り出した。大谷はそんな村越に苦笑しながら、数珠で倒れそうになった椀を支えた。
計五人、そして何故か彼らは大阪城の天守閣の上、要は屋根の上で昼餉を取っていた。
「流石天下の大阪城。景色いいねー」
「登っちゃってよかったんですか?」
「構わない。秀吉様と半兵衛様もちょくちょく登られていた。私も、ここからの景色は嫌いではない」
「………」
そう言って目を伏せた石田に村越は僅かに目尻を下げた。
「あぁ、太閤が雲を割られた時、確かに屋根に登られておったなぁ」
「わぉ太閤最強伝説!」
「で、伝説?」
「…三成さん」
わいわい騒ぐ3人をそっちのけに村越は石田の隣に座った。石田は視線だけ村越に向けた。
「秀吉様もきっと、この景色、好きだったと思います」
「…………」
「守りたいですね。この景色を」
「!…、そうだな」
石田はそう言って小さく笑った。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年11月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30